フランス史10講

東大名誉教授の柴田三千雄(故人)という人が書いたフランスの歴史書。本当は、「レ・ミゼラブル」の歴史的背景を知りたくて、フランス革命から1848年の二月革命くらいまでの歴史に関する解説書を物色していたのだが、なかなか適当なものが見当たらず、それ…

 夜明け前

「破戒」と並ぶ島崎藤村の代表作。実は、この大作に挑戦するのは今回が2度目であり、高校生の頃に読んだときにはストーリー展開のあまりの遅さに耐えきれず、なんとか第一部の上巻は読了したものの、下巻には手が伸びなかったという苦い思い出がある。そん…

 1964年のジャイアント馬場

「1976年のアントニオ猪木」や「1985年のクラッシュ・ギャルズ」等の著作で知られる柳澤健の本。といっても、アントニオ猪木やクラッシュ・ギャルズにはあまり興味がないのでそれらの作品は読んでいないのだが、取り上げられているのがジャイアント馬場とく…

 レ・ミゼラブル

家族揃って大好きなミュージカル作品の原作でもあるヴィクトル・ユーゴーの名作。以前から一度読んでみようと思っていたのだが、分厚い文庫本4冊というボリュームに圧倒されてしまい、なかなか手を出せないでいた。しかし、たまたま本屋で最初の数ページを…

 昨日の世界

「グランド・ブタペスト・ホテル(2013年)」を見て興味を抱いたシュテファン・ツヴァイクの遺作。第二次世界大戦中、逃亡先のリオデジャネイロのホテルで一冊の資料もないままに書き上げたという自身の回想録であり、本作を書き終えて間もなく、妻と一緒に服…

 グリーンランタン/グリーンアロー

今から40年以上前に発表されたアメコミの古典的名作。人種差別や環境破壊といった社会問題を初めてアメコミの世界に取り入れた作品として有名らしいのだが、時期的に考えても“子供向け”という制約からは脱し切れておらず、本作の十数年後に発表された「ダー…

 ビフォア・ウォッチメン: オジマンディアス/クリムゾン・コルセア

ビフォア・ウォッチメン・シリーズの第4巻。毎回、楽しく拝読させて頂いていたこのシリーズもこれで最終回。発売直後に購入しておいたのだが、読み終えてしまうのが惜しいような気がして手を付けるのがついつい遅くなってしまった。さて、ベテランらしいレ…

 情事の終わり

グレアム・グリーンの代表作の一つ。俺は、年老いて読書くらいしか楽しみが無くなったときに読むための小説家を何人かキープしており、グレアム・グリーンもそんな中の一人。そのため、彼の作品を読むのをずっと我慢していたのだが、近頃、他に読みたくなる…

 イエス像の二千年

二千年間に渡るイエス像の変遷を描いたヤロスラフ・ペリカンの労作。要するに、歴史的には一介のユダヤ人に過ぎなかったイエスのイメージが、ギリシャ哲学をはじめとする様々な思想やその時々の社会情勢等を反映してどのように変化していったのかを描いた作…

 ビフォア・ウォッチメン: ナイトオウル/Dr.マンハッタン

ビフォア・ウォッチメン・シリーズの第3作目。本作のストーリーを担当しているのはJ.マイケル・ストランジスキーという人なのだが、ウォッチメンのメンバーの中、最も常識人であるナイトオウル(二代目)と最も非人間的キャラであるDr.マンハッタンの二人を…

 加藤周一著作集14「羊の歌」

断続的に読んでいる加藤周一著作集の14巻目。題名から、俺の苦手な詩歌集だったらどうしようと思っておそるおそる手に取ってみたのだが、すぐに著者の半生記であることが分かって一安心。なかなかのやり手実業家であったらしい彼の祖父の暮らしぶりから始ま…

 「ユダ福音書」の謎を解く

1970年代にエジプトで発見された新約聖書の外典の一つである「ユダ福音書」の解説書。まだ正典の知識も不十分なので外典の勉強は当分先のことと考えていたのだが、その意外性タップリの書名の魅力には抗いきれず、とうとう購入。裏切り者のユダが記録したイ…

 木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか

増田俊也という小説家が書いた長編ノンフィクション。発表当時、格闘技ファンの間で大きな話題を呼んだ作品であるが、時代遅れのプロレス・ファンである俺にしてみれば、この本の題名が今一つピンとこなかったのも紛れもない事実であり、昔、写真で見たあの…

 銃・病原菌・鉄

ジャレド・ダイアモンドが1997年に発表したベストセラー。いろいろなところで話題になった作品であり、存在だけは以前から知っていたのだが、少々へそ曲がりなところがある俺としては、そのせいでかえって読むのが遅くなったきらいが無きにしも非ず。さて、…

 ビフォア・ウォッチメン:ミニッツメン/シルク・スペクター

ビフォア・ウォッチメン・シリーズの第2作目。このシリーズは作品ごとにクリエーターが変更になるらしく、第1作目のブライアン・アザレロに代わり、今回はダーウィン・クックという人がストーリーを担当。「ミニッツメン」では彼自身が作画も行っているが…

 冷血

高村薫が、トルーマン・カポーティの同名のノンフィクションノベルに触発されて書いた作品。家族4人を惨殺した二人組みの犯人の犯行動機等を明らかにするというテーマ自体は、カポーティの作品と同じなのだが、カポーティの作品が、それに関する合理的な説…

 ビフォア・ウォッチメン:コメディアン/ロールシャッハ

アメリカンコミックスの名作である「ウォッチメン」の前日譚を描いたシリーズの1作目。アメコミらしく、絵もストーリーも「ウォッチメン」とは別のアーティストが担当しているのだが、少なくともイラストに関しては「ウォッチメン」よりかなり進化しており…

 砂漠の修道院

宗教人類学者の山形孝夫の「聖書の起源」、「治癒神イエスの誕生」に続く3冊目。前半は、著者が訪れたエジプトのナイル川西岸の砂漠に点在するコプト教の修道院の様子が描かれている。コプト教というのは、451年のカルケドン公会議の後に主流派から分かれた…

 追憶のハルマゲドン

カート・ヴォネガットの死後に刊行された未発表作品集。発売されたときにすぐ購入したのだが、読むのがもったいないのでずっと取って置いた。内容は、何らかの理由によってボツにされた短編をかき集めたものであり、正直、作品のレベルはあまり高いとはいえ…

 思想のドラマトゥルギー

林達夫と久野収の二人による対談集。内容はプラトンから歌舞伎まで多岐に渡っており、おそらく俺にはその10分の1も理解できていないと思うのだが、我が国の知性を代表するこの二人の対談は、(ただ文字を追っていくだけならば)とても読みやすい。これは林…

 天外消失

短編ミステリイの傑作14編を収録したアンソロジー。本書の解説によると、“傑作”といってもなかなか他のアンソロジー等では読むことの出来ない、まあ、どちらかといえば“マイナー”な短編ばかりが集められているらしく、当然、俺にとっては初めてお目にかかる…

 加藤周一著作集13「小説・詩歌」

断続的に読んでいる加藤周一著作集の13巻目。題名のとおり、著者の発表した小説や詩等をまとめたものであり、その中で一番ボリュームがあるのが冒頭に収められた小説の「ある晴れた日に」。太平洋戦争末期、反戦思想を持つ青年医師の苦悩を描いた作品であり…

 スーパーマン:レッドサン

マーク・ミラー原作のスーパーマン物。とはいっても、前提が“赤ん坊のスーパーマンを乗せたロケットが、アメリカのカンザスではなく、ウクライナの集団農場へと落下していたら”というものであるため、本作のスーパーマンは“ロシア人”であり、ソ連の独裁者ス…

 逆まわりの世界

フィリップ・K. ディックが1967年に発表したSF作品。“ホバート位相により時間が逆行する世界”という設定には大いに興味があり、初版で購入してからの30年間、何度となく手に取ってはみたのだが、タバコの吸殻がだんだん長くなったり、髯を顎に貼り付けたりと…

 アラブから見た十字軍

アミン・マアルーフというレバノン生まれのジャーナリストが書いた本。題名のとおり、内容はキリスト教徒による十字軍遠征の実態をアラブ側から描いたものであり、前半は、分裂状態にあったイスラム諸国がフランク(=ヨーロッパ全体を意味する言葉)相手に…

 共産主義的人間

昨年読んだ「林達夫評論集」がとても面白かった著者の代表作の一つ。文庫本で200ページにも満たない作品であり、書名になった論文だけで一冊の本になっているのかと思ったら、やっぱりこちらも“評論集”。Wikipediaによると、この方、「書かざる学者」という…

 新リア王

高村薫の福澤彰之シリーズ第2作目。本自体はかなり以前に購入し、そのまま本棚に寝かせてあったのだが、昨年末に著者の新作(=「冷血」)が出版されたというニュースを耳にして、慌てて読んでみた次第。本作は「晴子情歌」の続編ということになるのだが、…

 化学の歴史

題名どおり、アイザック・アシモフが古代から現代に至る化学の歴史を綴った作品。ハヤカワから出ている彼の科学エッセイで読んだことのあるようなエピソードも多く、全体を通してあまり新鮮味は感じられなかったのだが、まあ、さすがアシモフということで、…

 ファウスト

言わずと知れたドイツの文豪ゲーテの代表作。古くは水木しげる原作のTVドラマ「悪魔くん」から、先日、DVDで拝見したルネ・クレールの「悪魔の美しさ(1949年)」に至るまで、本作の影響を受けた作品にはこれまで数多く接してきており、いつかは読まなければ…

 ゴヤ

堀田善衛の代表作の一つであるフランシスコ・デ・ゴヤの評伝。ちょっと分厚い文庫本で4冊というボリュームなのだが、ゴヤの生涯や作品評のみならず、スペインの風土や王室を中心とした当時の政治・外交情勢等、著者の興味は恐ろしく広範囲に及んでおり、そ…