砂漠の修道院

宗教人類学者の山形孝夫の「聖書の起源」、「治癒神イエスの誕生」に続く3冊目。

前半は、著者が訪れたエジプトのナイル川西岸の砂漠に点在するコプト教修道院の様子が描かれている。コプト教というのは、451年のカルケドン公会議の後に主流派から分かれたキリスト教分派の一つらしいのだが、単性論か否かという問題の前に、そこに暮らす修道士たちの原始キリスト教を思わせるような厳しい生活ぶりにまず驚かされる。

彼等の中には歯科医師をはじめ高学歴の者も含まれており、決して文化的に遅れている訳ではないのだが、そのような人々をも魅了する社会から隔絶された砂漠の生活にどのような魅力があるのか、とても興味がある。

ということで、後半は、聖書における砂漠の意味等に関する考察が展開されているのだが、「治癒神イエスの誕生」をベースにしたようなネタが多く、こちらも十分に面白い。どうやら、いつの間にかすっかり山形孝夫のファンになってしまったようであり、次は「聖母マリア崇拝の謎」を読んでみようと思います。