カルテット! 人生のオペラハウス

2012年作品
監督 ダスティン・ホフマン 出演 マギー・スミストム・コートネイ
(あらすじ)
イギリス南部にある老人ホーム“ビーチャム・ハウス”では、引退した多くの老音楽家たちに混じって、以前、「リゴレット」の四重唱(カルテット)で共演したことのあるレジートム・コートネイ)、ウィルフ、シシーの三人が静かな老後を送っていた。そんなところへ、カルテットのもう一人のメンバーであり、かつての大スターだったジーン・ホートン(マギー・スミス)が入居してくることに….


ダスティン・ホフマンが75歳で発表した彼の初監督作品。

かつてジーンと夫婦関係にあったレジーは、彼女の奔放さによって傷つけられた心の傷が未だ癒えていないらしく、彼女が入居してくるというニュースに大きく動揺する。しかし、本作のメインテーマになるのは、このジーンとレジーとの和解(=これは比較的早い時点で実現する。)ではなく、人前で歌うことを頑なに拒否するジーンを如何にして老人ホーム主催のコンサートに引っ張り出すかということ。

このジーンという人物、かつては相当の人気を博した大スターだったらしいのだが、その傲慢さと派手な異性交遊が災いして、今では頼れる親族も友人もいないような状況。それにもかかわらず、プライドの高さだけは依然として変わることはなく、衰えた歌声を人前で披露することを恥と考えているらしい。

こんな扱いにくいキャラクターではあるが、それをマギー・スミスが演じるとジーンの冷淡な言動の端々から“可愛らしさ”が滲み出てくるのだから大したもの。今のところ、こういった役をやらせたら、彼女の右に出る女優さんはいないんじゃないだろうか。

まあ、コメディ仕立てということで、“老い”の悲惨さなどについてはあまり触れられておらず、相当リアリティに欠けるような気もするのだが、そのおかげで見終わった後の印象はスッキリ爽やか。あのダスティン・ホフマンも随分と角が取れたんだなあと思いながら見ていた。

ということで、本作を見ていて、似たような環境にある老人たちを描いたジュリアン・デュヴィヴィエの「旅路の果て(1939年)」のことを思い出した。あちらの老人ホームは俳優向けであり、作品の雰囲気も本作と随分異なっていたように記憶しているが、確か本棚にDVDがあったと思うので、今度、久しぶりに見てみようと思います。