イエス像の二千年

二千年間に渡るイエス像の変遷を描いたヤロスラフ・ペリカンの労作。

要するに、歴史的には一介のユダヤ人に過ぎなかったイエスのイメージが、ギリシャ哲学をはじめとする様々な思想やその時々の社会情勢等を反映してどのように変化していったのかを描いた作品なのだが、正直、俺の知らない事がこれでもかというくらいギッシリと詰め込まれており、とても一読しただけでは理解できない。

まあ、聖書に基づいて幾通りもの異なった結論を導き出すことが出来るというキリスト教の“鷹揚さ”の現れでもあるのだろうが、書かれている内容はおそろしく広範囲にわたっており、俺の貧弱な知識ではとてもフォローしきれない。個々のテーマ自体はとても興味深いものが多く、決してつまらない訳では無いのだが、これほど読了するのに苦労した書物は最近では珍しい。

ということで、最後の「世界に属する人」の章では、“キリスト教も他の宗教も、結局、目指すところは同じ”みたいな考え方(=エキュメニズムというらしい。)が示されており、個人的にはとても良いことだと思うのだが、“イスラム国”の例を持ち出すまでもなく、その実現には様々な難問が山積しているのでしょう。