正統とは何か

G.K.チェスタトン著作集の1巻目。さて、本書のテーマである「正統とは何か」という問に対する答は、早くも冒頭の「1 本書以外のあらゆる物のための弁明」の最後で明らかにされており、それは「厳然たる事実として、キリスト教信仰の核心が、現実生活のエネ…

昭和史発掘 特別篇

昨夏に一応読了した松本清張の「昭和史発掘」の“特別篇”。収められているのは、単行本の方には収録されなかった「政治の妖雲・隠田の行者」と「『お鯉』事件」の2話と、昭和50年という節目の年に行われた3つの対談。前者に関しては、昭和史として「正面か…

新ナポレオン奇譚

1904年に発表されたG.K.チェスタトンの処女長編小説。正直、チェスタトンの代表作ともいうべき“ブラウン神父シリーズ”にはそれほどハマれずにいるのだが、その文章の端々から垣間見られる彼の哲学というか倫理観には妙に惹かれるところがあるのも事実。そん…

ナショナリズム

「その神話と論理」という副題が付された政治学者である橋川文三の本。以前から気になっていた思想家の一人なのだが、先日読んだ中島岳志の「親鸞と日本主義」の中で度々言及されていたことが契機となり、ようやく読んでみる気になった。「昭和維新試論」(1…

松本清張全集5

長編小説の「砂の器」一編のみを収録。野村芳太郎の監督による映画版「砂の器(1974年)」はビデオか何かで見たことはあるが、丹波哲郎、森田健作、加藤剛といった出演者の大仰な演技が鼻についてあまり好きにはなれなかった。唯一、ハンセン病患者の本浦千…

大転換

「市場社会の形成と崩壊」という副題が付けられた経済学者カール・ポランニーの代表作。以前読んで面白かったデヴィッド・ハーヴェイの「新自由主義」でも大きく取り上げられていた作品であり、いつか読んでみたいと思っていたのだが、近くの図書館にあるの…

親鸞と日本主義

政治学者の中島岳志が2017年に発表した親鸞と戦前の国体論との関係を考察した作品。親鸞の「他力本願」におすがりするのはもう少し先のことと思い、彼に関する勉強はずっとサボってきたのだが、ある意味、アナキズムの極だと思っていた「悪人正機」の親鸞が…

水滸伝(五)

「四大奇書あるいは五大小説の一翼を担う」中国古典長編小説の最終巻。長かった水滸伝もいよいよ完結を迎えるということで、本巻では招安実現後における108人の好漢たちの活躍の様子が描かれている。高俅をはじめとする「四悪人」の讒言によって官職に就くの…

水滸伝(四)

「四大奇書あるいは五大小説の一翼を担う」中国古典長編小説の四巻目。本巻には第61回から第82回までが収められているのだが、渋る〈玉麒麟〉盧俊義をかなり強引な手法によって仲間に引き入れた後、彼との城攻め競争に(不本意ながら)勝利した宋江が改めて…

水滸伝(三)

「四大奇書あるいは五大小説の一翼を担う」中国古典長編小説の三巻目。前巻の終盤になって、ようやく宋江が梁山泊の実質的なリーダーの地位に収まった訳であるが、それにより本作のテーマ(=宋江を中心とする梁山泊の興亡)が明確になったことの効果は絶大…

水滸伝(二)

「四大奇書あるいは五大小説の一翼を担う」中国古典長編小説の二巻目。前巻を読んでいてちょっぴり不満に思ったのは、「ヒーローがめまぐるしく入れ替わり、誰が物語全体の主人公になるのか皆目見当がつかない」という点だったのだが、この巻では前半は武松…

水滸伝(一)

「四大奇書あるいは五大小説の一翼を担う」中国古典長編小説の一巻目。平井和正&石森章太郎コンビによる「幻魔大戦」から最近のアベンジャーズまで、様々な特殊能力を持ったヒーローたちが協力し合って巨悪に立ち向かうというストーリーは昔から俺の大好物…

中動態の世界

“意志と責任の考古学”という副題の付けられた國分功一郎の哲学書。タイトルからして何やら難しそうだが、2014年に「精神看護」という雑誌に連載された文章がベースになっており、一般向けに書かれているため決して“難解”ではない。勿論、内容をどこまで深く…

高丘親王航海記

1987年8月に亡くなった澁澤龍彦の遺作となる長編幻想小説。この人も昔から読んでみたいと思っていた作家の一人なのだが、多作のせいもあってどの辺りから手を付ければ良いか皆目見当がつかない。そこで比較的作品数の少ない小説分野に的を絞ってみたところ…

松本清張全集4

「黒い画集」という短編集に収められた9編の短編を収録。著者自身による「『黒い画集』を終って」によると、昭和33年9月末から1年9ヵ月間にわたって週刊朝日に連載された“読切り連作”がベースになっているそうであり、そのうちの一編である「失踪」は他…

ビリー・バッド

ハーマン・メルヴィルの死後30年以上経った1924年に発表された中編小説。読もうと思っていた本が本作を題材に取り上げていることを知り、先にこっちを読んでみることにした。比較的翻訳の新しい光文社の古典新訳文庫版をチョイスしたのだが、「白鯨」を読ん…

昭和天皇

先日読んだ「大正天皇」と同じ原武史による昭和天皇論。本書の目的は、新嘗祭に代表される宮中祭祀への“こだわり”を通して「裕仁=昭和天皇という人物を読み解」こうするものであり、そのこだわりに関する貞明皇后の影響やライフワークでもある生物学研究と…

新自由主義

「その歴史的展望と現在」という副題の付けられたデヴィッド・ハーヴェイの著作。本書の存在についてはかなり早くから気付いてはいたのだが、正直、内容を理解できる自信が無かったこともあって長らく手をこまねいていた。しかし、先日読んだ「資本主義と闘…

二十日鼠と人間

1937年に出版されたジョン・スタインベックの中編小説。以前読んだ「怒りの葡萄」がとても面白かったので、その2年前に発表されたこの作品を読んでみることにした。「怒りの葡萄」のテーマが“怒り”だとすれば、本作のそれは“孤独”であり、不況の長引く中、…

資本主義と闘った男

「宇沢弘文と経済学の世界」という副題の付けられたフリージャーナリスト佐々木実による宇沢弘文の伝記。「この最後の者にも」を読んでいて、やっぱりジョン・ラスキンはちょっと古すぎたかなあと思っていたときに目に入ったのがこの本であり、内容を理解で…

ラスキン

中公クラシックスの一冊であり、ラスキンの「この最後の者にも」と「ごまとゆり」の2編が収められている。久野収の「市民主義の立場から」に収録されていた「マハトマ・ガンディー ―もう一つの伝記―」という論文の中に「産業革命以後の資本主義、ヴィクトリ…

大正天皇

原武史が2000年に発表した作品であり、大正天皇の47年間の短い生涯が詳しく紹介されている。松本清張の「昭和史発掘」を読み終えたときに“もう少し天皇制の勉強をしてみよう”と思ったのだが、その手はじめに読んでみたのがこの本。本作の序章でも述べられて…

キリスト教の創造 ―容認された偽造文書―

バート・D.アーマンという新約聖書・原始キリスト教史の研究者が2011年に発表した本。新約聖書の歴史的な成立ちについては、以前、加藤隆の「『新約聖書』の誕生」で勉強したのだが、本書はその裏に隠された“偽書”の存在にスポットライトを当てた著作であり…

闇冥

馳星周の選定による山岳ミステリ・アンソロジー。長かった「昭和史発掘」をようやく読了した後なので、何か軽い読み物を欲していたところ、同じ松本清張の短編を含むこのアンソロジーを発見。長引く梅雨空のせいで山歩きもなかなかままならない状況であり、…

昭和史発掘13

松本清張のノンフィクション作品「昭和史発掘」の最終巻。この巻に収められているのは、特設軍法会議が決行将校らに下した判決の内容とそれに基づいて行われた処刑の様子等を描いた「判決」と、「首謀中の中心人物」である磯部浅一の遺した「獄中日記」の内…

昭和史発掘12

松本清張のノンフィクション作品「昭和史発掘」の続き。この巻に収められているのは、二・二六事件に関与した将校、下士官兵、民間人を裁くため、緊急勅令で東京臨時陸軍軍法会議が設置されるまでの経緯、背景等を描いた「特設軍法会議」と、そこで審理に携…

昭和史発掘11

松本清張のノンフィクション作品「昭和史発掘」の続き。この巻に収められているのは、戦勝気分に酔う決行部隊とその「討伐」を決定した参謀本部の動きを対照的に記述した「占拠と戒厳令」、形勢逆転を知らされて動揺する青年将校の姿とそれに一喜一憂する老…

昭和史発掘10

松本清張のノンフィクション作品「昭和史発掘」の続き。この巻に収められているのは、昭和11年2月26日午前5時をもっていよいよ開始された青年将校らによる武力行使の詳細を描いた「襲撃」と、その日のうちに始まった陸軍幹部に対する「上部工作」の様子を…

昭和史発掘9

松本清張のノンフィクション作品「昭和史発掘」の続き。この巻に収められているのは、二・二六事件の首謀者の一人でありながら最後まで決行に逡巡し続けた安藤輝三大尉の心境等に迫る「安藤大尉と山口大尉」と、いよいよ決行を明朝に控えた各実行部隊におけ…

昭和史発掘8

松本清張のノンフィクション作品「昭和史発掘」の続き。この巻に収められているのは、前巻で取り上げられていた相沢事件を巡る皇道派の法廷闘争の様子を描いた「相沢公判」と、二・二六事件の主犯である青年将校たちに大きな影響を与えたとされる北一輝らの…