キリスト教の創造 ―容認された偽造文書―

バート・D.アーマンという新約聖書・原始キリスト教史の研究者が2011年に発表した本。新約聖書の歴史的な成立ちについては、以前、加藤隆の「『新約聖書』の誕生」で勉強したのだが、本書はその裏に隠された“偽書”の存在にスポットライトを当てた著作であり…

闇冥

馳星周の選定による山岳ミステリ・アンソロジー。長かった「昭和史発掘」をようやく読了した後なので、何か軽い読み物を欲していたところ、同じ松本清張の短編を含むこのアンソロジーを発見。長引く梅雨空のせいで山歩きもなかなかままならない状況であり、…

昭和史発掘13

松本清張のノンフィクション作品「昭和史発掘」の最終巻。この巻に収められているのは、特設軍法会議が決行将校らに下した判決の内容とそれに基づいて行われた処刑の様子等を描いた「判決」と、「首謀中の中心人物」である磯部浅一の遺した「獄中日記」の内…

昭和史発掘12

松本清張のノンフィクション作品「昭和史発掘」の続き。この巻に収められているのは、二・二六事件に関与した将校、下士官兵、民間人を裁くため、緊急勅令で東京臨時陸軍軍法会議が設置されるまでの経緯、背景等を描いた「特設軍法会議」と、そこで審理に携…

昭和史発掘11

松本清張のノンフィクション作品「昭和史発掘」の続き。この巻に収められているのは、戦勝気分に酔う決行部隊とその「討伐」を決定した参謀本部の動きを対照的に記述した「占拠と戒厳令」、形勢逆転を知らされて動揺する青年将校の姿とそれに一喜一憂する老…

昭和史発掘10

松本清張のノンフィクション作品「昭和史発掘」の続き。この巻に収められているのは、昭和11年2月26日午前5時をもっていよいよ開始された青年将校らによる武力行使の詳細を描いた「襲撃」と、その日のうちに始まった陸軍幹部に対する「上部工作」の様子を…

昭和史発掘9

松本清張のノンフィクション作品「昭和史発掘」の続き。この巻に収められているのは、二・二六事件の首謀者の一人でありながら最後まで決行に逡巡し続けた安藤輝三大尉の心境等に迫る「安藤大尉と山口大尉」と、いよいよ決行を明朝に控えた各実行部隊におけ…

昭和史発掘8

松本清張のノンフィクション作品「昭和史発掘」の続き。この巻に収められているのは、前巻で取り上げられていた相沢事件を巡る皇道派の法廷闘争の様子を描いた「相沢公判」と、二・二六事件の主犯である青年将校たちに大きな影響を与えたとされる北一輝らの…

昭和史発掘7

松本清張のノンフィクション作品「昭和史発掘」の続き。いよいよここから「二・二六事件」が主題として取り上げられているのだが、この7巻に収められているのは昭和10年8月12日に起った「相沢事件」と、その後の経緯等を取りまとめた「軍閥の暗闘」の2編…

昭和史発掘6

松本清張のノンフィクション作品「昭和史発掘」の続き。この巻に収められているのは、昭和8年から10年の間に起きた出来事をテーマにした「京都大学の墓碑銘」、「天皇機関説」、「陸軍士官学校事件」の3編であり、いずれも全集には未収録。最初の「京都大…

昭和史発掘4・5

1964年から1971年にかけて「週刊文春」に連載された松本清張のノンフィクション作品。「松本清張全集32」収録の「昭和史発掘」から“割愛”されてしまった長編「二・二六事件」を読むために、近くの図書館から単行本の方を借用。全13巻のうち「二・二六事件」…

ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ

ジョン・ル・カレが1974年に発表したスパイ小説の傑作。以前、DVDで拝見した「裏切りのサーカス(2011年)」の原作であり、映画ではよく理解できなかった点を確認するためにいつか読んでみようと思っていたのだが、それからはや6年。映画のストーリーは“複…

松本清張全集32

「昭和史発掘」と「身辺的昭和史」という2編のノンフィクション作品を収録。前回、全集の第3巻を読んだ時点で早くも“全巻読破”の目標に黄色信号が点灯してしまったのだが、まあ、推理モノにはちょっと飽きが来たところだったので別のジャンルの作品をつま…

伝奇集

アルゼンチン出身の小説家ホルヘ・ルイス・ボルヘスが1944年に発表した短編集。実際には「八岐の園」と「工匠集」という二冊の短編集を併せたものであり、全部で17の作品が収められている。とても著名な本であり、(往年の?)SFファンとしてはもっと早い時…

市民主義の立場から

1991年に出版された久野収の評論・エッセイ集。「思想のドラマトゥルギー」を読んで以降、何か久野収の著作を読んでみたいと思っていたのだが、例によってどの本から手を付ければ良いのか皆目見当がつかない。Wikipediaによると「いわゆる『主著』と呼ばれる…

君主論

ニコロ・マキアヴェリが1513年に執筆した政治学の古典。あまりにも有名すぎる故、かえって読むのを躊躇っていた本なのだが、以前読んだ「社会契約論」の中でルソーが「マキアヴェッリは国王に教訓を与えるふりをしながら、人民に大切な教訓を与えたのである…

虹の鳥

沖縄県出身の小説家である目取真俊が2006年に発表した長編小説。多くの反対や疑問の声が上がっているにもかかわらず、相変わらず土砂の投入が続いている辺野古の新基地建設問題。本来、沖縄県民を米軍基地の“脅威”から守るべき日本政府が、新基地建設に反対…

谷中村滅亡史

明治40年8月に刊行され(即日発禁にされ)た荒畑寒村20歳の処女作。先月、妻と一緒に渡良瀬遊水地を訪れたとき、“郷土の偉人”田中正造のことをもっと勉強しなければと思ったのだが、とりあえず本書がその一冊目。明治38年の第二次東北伝道行商(=赤くペン…

黒船前夜

“ロシア・アイヌ・日本の三国志”という副題の付けられた渡辺京二の著作。明治維新の勉強をしているときに興味を惹かれた本の一冊に「逝きし世の面影」という作品があり、本当はそちらを読んでみるつもりだったのだが、ちょっとした気の迷い(?)で本書の方…

怒りの葡萄

ジョン・スタインベックが1939年に発表したアメリカ文学を代表する名作。本書を読んでみようと思ったのは、先日、DVDで拝見した「レディ・バード(2017年)」の影響であり、映画の冒頭、車内でこの本の朗読テープを聴いていた主人公とその母親が号泣するとい…

ヨブ記講演

内村鑑三が1920年4月から12月にかけて行った21回に及ぶ講演の記録。ヨブ記というのは、酷い話の多い旧約聖書の中でも飛び抜けて悲惨かつ不条理なエピソードであり、神とサタンによって「神は物質的恩恵の故に崇むべき者にあらず、神は神御自身の故に崇むべ…

日本近代史

1857年から1937年までの80年間における我が国の政治史を概観した坂野潤治の著作。遠山茂樹の「明治維新」や丸山真男の「『文明論之概略』を読む」を読んだ後の続きをどうしようか悩んでいたときに目に止まったのがこの本であり、明治維新に関してはダブって…

海と毒薬

「九州大学生体解剖事件」を題材にした遠藤周作の小説。この本を読んでみようと思ったのは、先日拝読したリチャード・フラナガンの「奥のほそ道」の中でこの事件が取り上げられていたからなのだが、実際に“生体解剖”が行われたのは敗戦間近の1945年5月のこ…

人間 -この象徴を操るもの

エルンスト・カッシーラーが1944年に発表した“人間文化”の哲学書。本当は同じ著者の「国家の神話」を読みたかったのだが、近くの図書館に置いてなかったので仕方なく本書を先に読んでみることにした。ユダヤ系ドイツ人である著者が亡命先のアメリカで執筆し…

荒涼館

チャールズ・ディケンズが1852年から翌年にかけて発表した長編小説。 最初、寝る前にベッドで横になって読んでいたのだが、活字が小さい(=筑摩書房の世界文学全集で読んだ。)のと出だしのストーリーが面白くないのとで、わずか7ページにも満たない第一章…

 奥のほそ道

オーストラリア人作家のリチャード・フラナガンがブッカー賞を受賞した長編小説。正直、新しい小説は何を読んだら良いのか見当がつかない状況が続いているのだが、本作の高評価を耳にして読んでみることにした。本書の原題である「The Narrow Road to the De…

 白鯨

ハーマン・メルヴィルが1851年に発表したアメリカ文学を代表する傑作。本当はメルヴィルの遺作である「ビリー・バッド」を読んでみたかったのだが、やはりものには順序というものがあるだろうということで、この未読の大作に挑戦。読みにくいことでも有名な…

 西南役伝説

西南の役(1877年)を知る古老たちから聞取りを行った様々なエピソードを題材にした石牟礼道子の短編集。“あとがき”によると、本書を執筆するそもそもの動機は、「地上の形はごらんの通りなので、なぜそうなるのか根の育ち方を知りたかった」からであり、そ…

 国家に抗する社会

ピエール・クラストルというフランス人の人類学者が1974年に発表した政治人類学の本。先日拝読させて頂いた「『文明論之概略』を読む」の最後のところで、丸山真男は「主権国家を主要単位とする世界秩序原理」は決定的な破綻の様相を呈していると指摘してい…

 松本清張全集3

「ゼロの焦点」と「Dの複合」という2編の長編を収録。「ゼロの焦点」は、これまで映画やTVドラマで何度となく映像化されてきた著者の代表作の一つなので題名くらいは知っていたが、おそらく真面目に鑑賞したことは一度もないハズ。見合い結婚後、半月もし…