1973年作品
監督 ロバート・アルトマン 出演 エリオット・グールド、ニーナ・ヴァン・パラント
(あらすじ)
私立探偵のフィリップ・マーロウ(エリオット・グールド)は、妻殺しの犯人である友人テリーの逃亡を助けた疑いで警察に逮捕されてしまうが、彼の無実を信じるマーロウは供述を拒否。翌日、テリーが逃亡先のメキシコで自殺していたことが判明し、マーロウも釈放されるが、そんなところへアイリーン(ニーナ・ヴァン・パラント)という女性から行方不明の夫の捜索依頼が舞い込む…
レイモンド・チャンドラー原作の「長いお別れ」の映画化。
昔、(おそらくTVで)一度見ているのだが、ストーリー的には猫とダンサーが出てくる冒頭部分と、やくざ者のマーティが女性の顔をビンで殴りつけるシーンくらいしか覚えていなかった。(チャンドラーの原作も文庫で読んでいる筈なんだけど、そっちの内容も記憶にない。)
しかし、エリオット・グールド演じる少々風変わりなフィリップ・マーロウのイメージや、様々なアレンジで繰り返し演奏されるテーマ音楽(=ジョン・ウィリアムス作)のメロディなんかはしっかりと記憶に刻み込まれており、これらが醸し出す70年代特有のシラけたようなアンニュイな雰囲気こそが本作の最大の魅力だろう。
今回見返してみても、ストーリーの細部について説明が不十分と思われるところが散見されるし、特にマーロウとテリーの友情に関する描写が決定的に不足しているため、問題のラストシーンで友人の裏切りにあそこまで怒る理由が理解できず、マーロウの行動に少々唐突な印象を受けてしまう。
しかし、そういった説明部分を大幅に省きつつ、マーロウが夜中にキャットフードを買いに行くシーンなんかを丁寧に描いたロバート・アルトマンの計算というか、決意、こだわりみたいなものは決して間違っていなかった訳で、彼にとって有名ハードボイルド小説を映画化するということは即ちこういうことだったんだろうと思う。
ということで、エリオット・グールド演じるフィリップ・マーロウは、トレンチコートを脱ぎ棄てたせいもあって、とても自然体。特に喧嘩が強い訳でも、女にモテる訳でもないのだが、男の俺から見てもとてもカッコ良いのは一体何故なんでしょう。