共産主義的人間

昨年読んだ「林達夫評論集」がとても面白かった著者の代表作の一つ。

文庫本で200ページにも満たない作品であり、書名になった論文だけで一冊の本になっているのかと思ったら、やっぱりこちらも“評論集”。Wikipediaによると、この方、「書かざる学者」という異名をお持ちだったようであり、あまり長い文章は書かない人だったのかもしれない。

さて、問題の「共産主義的人間」という論文は、1951年という比較的早い時点で(当時のインテリの間ではタブーであったであろう)スターリン批判を行ったということで有名らしいが、その批判の裏側から共産主義に対する深い愛着が透かして見えるあたりがなんとも好ましい。

確かに、派手さやスピードといった点では資本主義に遠く及ばず、それに追い付こうとしていろいろ無理をしてしまったのだろうが、本来、誰にでも人間らしい生活を保障するというのが共産主義の出発点であり、資本主義の派手さやスピードが益々非人間的になっていく今こそ、新しい形での共産主義への試みが必要なのだろう。

ということで、著者のスマートな語り口は相変わらずであり、言葉の端々から頭の良さがにじみ出てくる。俺も、若い頃にこんな教師に出会っていたら、今とはちょっと違った生き方を選択していたのかもしれません。