トランボ ハリウッドに最も嫌われた男

2015年
監督 ジェイ・ローチ 出演 ブライアン・クランストンダイアン・レイン
(あらすじ)
1940年代のハリウッド。売れっ子の脚本家であるダルトン・トランボ(ブライアン・クランストン)は映画会社のMGMと破格の金額で契約を更新するが、そんな彼の元へワシントンD.C.で開かれる公聴会に出席せよとの召喚状が届く。そこでの“共産主義者か否か”という質問にまともに取り合おうとしなかった彼は議会侮辱罪で告発され、2年の実刑判決を受けてしまう…


ハリウッド・テンのメンバーであったダルトン・トランボの受難を描いた作品。

アカデミー脚本賞に輝いた「ローマの休日(1953年)」の真の脚本家が(クレジットされているイアン・マクレラン・ハンターではなく)彼であることは映画ファンの間ではもはや周知の事実であり、見る前はネタとして少々新鮮味に乏しいのではと思っていたのだが、そんな心配は無用のなかなか興味深い作品だった。

もちろん「ローマの休日」に関するエピソードも出てくるが、そちらは意外にあっさりとした扱いであり、むしろ中心になって描かれているのは生活費を稼ぐためにB級映画の脚本を匿名で大量生産するエピソード。供給先はキング・ブラザーズという二流の映画会社なのだが、トランボの窮地を救ったのが金と女のことしか考えない映画人というのは、事実としても皮肉が効いていてとても面白い。

また、1940〜50年代のハリウッドが舞台ということでちょっと懐かしい映画関係者が数多く顔を揃えており、当時のフィルム映像のみならず、そっくりさん(?)の皆さんがカーク・ダグラスオットー・プレミンジャーといった個性的なキャラクターを熱演しているのを拝見できるのがとても面白い。

一方、同じそっくりさんでも、主人公たちをイジメる側に回るジョン・ウェインサム・ウッドエドワード・G.ロビンソン等の姿を見るのはちょっと辛いところであり、もちろん、彼らもアメリカン・ヒューマニズムの熱心な信奉者には違いないのだろうが、残念ながらその射程距離がちょっと短すぎたようである。

ということで、鑑賞後、映画評論家の町山智浩氏による本作の解説をネット上で発見。それによると、コーエン兄弟が「ヘイル、シーザー!(2016年)」でハリウッド・テンのメンバーを茶化してみせたのは、彼らの子どもっぽい共産主義への憧れを批判するためだったそうであり、成程と思わず納得してしまいました。