今日は、かねてからの念願だった尾道を観光してから帰宅する予定。
昨日の宮島での大混雑ぶりを見て妻&娘も納得してくれたらしく、ホテルの朝食(=フレンチトーストが美味しかった。)を素早く済ませて午前7時過ぎにチェックアウト。JRを使って尾道駅に着くと、数が少なそうなため不安だったコインロッカーにはまだ余裕があり、荷物を預けて身軽になってからバス乗り場へ向う。
今日の最初の訪問先は小津安二郎の「東京物語(1953年)」のロケ地にもなった浄土寺であり、今回の広島旅行で俺が一番楽しみにしていた場所。勿論、それから60余年の月日が流れているため、境内の雰囲気もそこから見下ろせる尾道水道の景色も映画の記憶とはうまく結びつかないが、小津や笠智衆、原節子といった面々がこの地を訪れたことを思うだけで感無量。朝一で訪れたため、観光客の姿がまばらだったのも嬉しかった。
次の目的地である御袖天満宮までは曲がりくねった坂道を歩いて行く。すると、野良猫が2匹、道端で日向ぼっこを楽しんでおり、その姿を見つけた娘は大喜び。実は尾道は“猫の街”としても有名であり、俺の“ロケ地巡り”に対し、彼女は“野良猫ウォッチング”を楽しみにしていた。
その後、地元の親切な男性にすぐ手前の大山寺まで案内して頂き、無事、御袖天満宮に到着。石段は上下二つに分かれていたが、おそらくその上の方が「転校生(1982年)」に出て来たものに違いない。境内の奥に繋がれた元気な飼い犬の鳴き声以外はとても静かな場所であり、映画のシーンをのんびり思い返すにはうってつけの雰囲気だった。
といっても、のんびり出来たのはここまでであり、観光名所である千光寺山ロープウェイの山麓駅まで歩いて行くとそこには長い行列が出来ている。しかし、思ったよりも搬送能力は優れているらしく、20分くらい待たされただけで山頂にある千光寺公園に到着。展望台からは尾道水道やしまなみ海道の様子が良く眺められた。
さて、“文学のこみち”をたどって千光寺に着くと、さして広くない境内は大勢の観光客で溢れかえっており、最初に訪れた浄土寺とはえらい違い。妻から“くさり山”に挑戦するように勧められたが、混んでいたし、力試しにもなりそうにないので丁重にお断り。天寧寺の海雲塔付近まで下りてくると、ようやく人混みから解放される。
一般的な観光ルートはここから文学記念室や志賀直哉旧邸へと進んでいくが、我々はその反対方向にある“猫の細道”に入ってみる。観光客が多すぎるためか、入口付近で見掛けた2匹以外、猫の姿は見当たらなかったが、娘によると“本来、野良猫とはそうあるべきもの”だそうであり、意外にガッカリしたような様子はなかった。
そこを下った先にあるのが「時をかける少女(1983年)」のロケ地となった艮神社であり、先日、DVDを見返したばかりということもあって記憶は鮮明。境内にはロケが行われた当時の雰囲気が期待した以上に色濃く残されており、映画に出て来た樹齢900年以上という楠もとても立派。娘に教えられた手水舎の玄武がちょっと珍しかった。
そろそろ昼時ということで、商店街に出て名物の尾道ラーメンのお店を探すが、人気の「朱華園」の前にはものすごい人混みが出来ている。次に向った「壱番館」もかなり待たされそうであり、宮島のときのように方針変更を提案するも妻の同意が得られない。やむなく何故か空いていた餃子屋さん(?)で尾道ラーメンを注文してみたが、これは完全な失敗だった。
しかし、その後、口直しにと思って立ち寄った「エタニティ」というお店のクレープがとても美味しかったので、三人揃って一気に元気回復。午前中にパスしてしまった千光寺新道(=工事中?だったのが残念)を上って志賀直哉旧居を見学した後、宝持寺、光明寺、海福寺と歩いてみたが、途中、数匹の野良猫と出会えて娘も喜んでいた。
さて、最後のお楽しみは妻のリクエストにお応えしての“尾道水道クルーズ”。スタミナ切れの娘は甘味処で待っているというので、妻と二人で桟橋に行ってみるとちょうど出航のタイミングだったらしく、待つことも無く船内に入る。狭い2階の座席は満席だったがそこ以外はガラガラであり、1階後方の空席に腰を下ろすと間もなく出港。
所要時間は約40分であり、その間、造船所や新尾道大橋といった観光名所を見て回るのだが、今日訪れた千光寺や浄土寺を海上から眺め返すのもまた一興。また、“かつては造船の町で栄えた尾道も、今では猫の街に成り下がり(?)…”といったボヤキ口調で語られる船長さんの観光ガイドがとても愉快だった。
ということで、楽しかった広島旅行もこれでミッション完了であり、娘と合流して最後のお土産購入を済ませた後、福山〜東京〜宇都宮と新幹線を乗り継いで無事帰宅。最初、JTBに行ったときにはどうなることかと思った手作りの広島旅行も、妻&娘の協力のおかげで大満足の結果となりました。