ファウスト

言わずと知れたドイツの文豪ゲーテの代表作。

古くは水木しげる原作のTVドラマ「悪魔くん」から、先日、DVDで拝見したルネ・クレールの「悪魔の美しさ(1949年)」に至るまで、本作の影響を受けた作品にはこれまで数多く接してきており、いつかは読まなければならない作品だとは思っていたのだが、直接のきっかけになったのが「魔法少女まどか☆マギカ」だというのは、本人としてもちょっとビックリ。

さて、今回は岩波文庫版で読んだのだが、グレートヒェンとの悲恋で幕を閉じる第一部についてはあらかじめ覚悟していたよりずっととっつきやすく、胸躍らせながら第二部に取り掛かったのだが、内容、スタイルともに第一部とはガラッと変わっており、なかなかページが先に進まない。

いや、悪魔がギリシア神話の世界を苦手にしていたり、人生に前向きな人工生命体が登場するなど、卓越したアイデアは豊富であり、盲目となった主人公が皮肉としか言いようがない勘違いによって“瞬間よ止まれ、汝はいかにも美しい”と叫んでしまうラストも十分に残酷なのだが、それらが占めているのは全体の1割程度であり、残りの9割はテーマに直接関係がないと思われる雑多なエピソードの洪水。

まあ、原文の言語的な美しさの助けがあれば何とか耐えられるのかもしれないが、語学力も詩の素養もない俺にとっては到底無理な相談であり、正直、第一部の巻末に載っている丁寧な解説(=第二部のあらすじも書いてある。)を読んだところで済ませてしまった方が良かったような気もする。

ということで、できるだけ舞台上でどのように演じられるのかをイメージしながら読んでいたのだが、俺の貧弱な想像力では、発表当時、問題の第二部がどのような形で上演されたのか想像もつかない。逆に、現代のCG技術を駆使して映像化してみれば、イメージの奔流のような素晴らしいSF映画になるのかもしれません。