ジャレド・ダイアモンドが1997年に発表したベストセラー。
いろいろなところで話題になった作品であり、存在だけは以前から知っていたのだが、少々へそ曲がりなところがある俺としては、そのせいでかえって読むのが遅くなったきらいが無きにしも非ず。
さて、内容を一言でいうと、現在における世界の民族間格差の原因を明らかにしようとするものであり、文庫本2巻の相当ボリュームのある書物なのにもかかわらず、本当にこのことに関してしか書かれていない。
上巻では、格差の原因を“各民族が生まれ育った大陸の環境の差”に求め、飼育や栽培に適した動植物の数が地域によって大きな偏りがあったこと、東西に広いユーラシア大陸では(主に気象面で)南北に伸びた他の大陸より文明の伝達が容易だったこと、の2点を重視する。
確かに、単純なことではあるが、言われてみれば非常に説得力のある主張であり、読んでいる最中の“目から鱗”感はかなりハンパない。平易な記述にもかかわらず、これだけ知的好奇心を満足させてもらえたのは久しぶりのことであり、本書の人気の秘密がよく分かった。
これに対し、下巻は前記仮説の応用編のようなものであり、オーストロネシア人や南北アメリカの先住民等の現状をこの仮説に基づいて丁寧に説明してくれる。まあ、上巻の復習みたいな感じで勉強にはなるのだが、正直、ちょっと退屈かなあ。
ということで、人類史における銃や病原菌、鉄の重要性は良く理解できたが、同じユーラシア大陸内での格差の原因を考えた場合、宗教の果たした役割を軽視することは決して出来ないような気がする。まあ、著者にとって、キリスト教批判はタブーだったのかもしれませんが…