天外消失

短編ミステリイの傑作14編を収録したアンソロジー

本書の解説によると、“傑作”といってもなかなか他のアンソロジー等では読むことの出来ない、まあ、どちらかといえば“マイナー”な短編ばかりが集められているらしく、当然、俺にとっては初めてお目にかかる作品ばかり。

一番面白かったのは、本書を手にする直接の動機になったブレット・ハリデイという作家の「死刑前夜」。いわゆる叙述トリックの名作なのだが、この作品の凄いのはラストのどんでん返しが無かったとしてもしみじみとした味わいのある西部劇の佳品として見事に成立しているところであり、いや、むしろあのまま“やむをえず人を殺してしまった若者と彼に同情する老土木技師の話”として終わらせて欲しかったなあ。

また、フレドリック・ブラウンやポール・アンダースンといったSF作家の手になる小説も収められており、特に前者の「後ろを見るな」はなかなかの力作。ギャングに追われた主人公が次第に正気を失っていく様を描いているのだが、彼の妄想の中に読者までが引きずり込まれてしまうというのは新鮮な体験であり、(雑誌で読んでいるのでは無いにもかかわらず)読み終わって、つい後ろを見てしまった。

ということで、その他の作品もそれぞれ一癖あるような作品ばかりであり、読み終えての満足度はかなり高い。また、似たようなアンソロジーを探して読んでみたいと思います。