ビフォア・ウォッチメン・シリーズの第3作目。
本作のストーリーを担当しているのはJ.マイケル・ストランジスキーという人なのだが、ウォッチメンのメンバーの中、最も常識人であるナイトオウル(二代目)と最も非人間的キャラであるDr.マンハッタンの二人をまとめて料理してしまえるという驚異的な懐の深さにまずは感動。
特に、ジョー&アンディ・キューバートが作画を担当した「ナイトオウル」では、ロールシャッハやトワイライト・レディといった魅力的なキャラクターを投入することによってストーリーに彩りと奥行きを持たせることに成功しており、第1作目では少々精彩に欠る印象の強かったロールシャッハの大活躍が見られるのもとても嬉しかった。
これとは対照的に、アダム・ヒューズが作画を担当した「Dr.マンハッタン」ではほとんどアクションシーンは登場せず、“シュレーディンガーの猫”をネタにした、哲学マンガならぬ量子論マンガが展開される。ラストにはオジマンディアスも登場し、彼がメインで取り上げられる予定の第4作の発売が一層待ち遠しくなってしまった。
ということで、本作にはこの2作品以外にも「モーロック」という短編が収録されており、作画を担当したのはエデュアルド・リッソという人であるが、ストーリー担当はやはりJ.マイケル・ストランジスキー。モーロックはウォッチメンに登場した悪役の一人なのだが、オジマンディアスの前では全くの小物であり、ちょっと風変わりな哀愁の漂う佳品に仕上がっています。