ビフォア・ウォッチメン: オジマンディアス/クリムゾン・コルセア

ビフォア・ウォッチメン・シリーズの第4巻。

毎回、楽しく拝読させて頂いていたこのシリーズもこれで最終回。発売直後に購入しておいたのだが、読み終えてしまうのが惜しいような気がして手を付けるのがついつい遅くなってしまった。

さて、ベテランらしいレン・ウェインというライターの手になる「オジマンディアス」のストーリーは、ウォッチメン本編では描かれなかった彼の少年時代から始まり、コメディアンの殺害という本編スタート直前のエピソードで幕を閉じるのだが、正直、アッと驚くような新ネタは提供されず、今まで語られてきたストーリーをオジマンディアスの側から語り直すといった印象が強い。

まあ、本編のみならず、前巻までのビフォア・ウォッチメン・シリーズの内容も踏まえなければいけないということは大変なことだろうし、ここまで多くのライター達の手によって築き上げられてきたウォッチメンの世界観をラスト一作でひっくり返す訳にはいかないという事情も良く分かるのだが、少々の物足りなさを感じてしまうことも否定できない。

しかし、そんな不満の相当部分をカバーしてくれているのが、作画を担当したジェイ・リーの描く素晴らしいアートの数々であり、その美しさはシリーズ全体を通しても最高のレベル。オジマンディアスの貴族趣味(?)にも上手くマッチしていたように思う。

ということで、もう一作の「クリムゾン・コルセア」は、本編の“劇中劇”として不気味な雰囲気を盛り上げるのに寄与していた「黒の船」に触発されたものらしいのだが、ストーリーの一部が映画「パイレーツ・オブ・カリビアン(2003年)」シリーズとカブっているため全然怖くない。オマケ(?)の「ダラー・ビル」の方がずっと面白かったです。