本
ミシェル・フーコーが1966年に発表した彼の代表作の一つ。学生の頃に背伸びをして読んでいた雑誌「現代思想」では度々紹介されていたものの、彼の著作を直に(?)読むのは今回が初めて。難解という前評判どおり最後まで読み通すには相当の労力が必要であり…
第一回泉鏡花賞に輝いた半村良のSF伝奇ロマン。高皇産霊神の末裔であり、かつては皇室のさらにその上に位したといわれる〈ヒ〉一族の活躍を描いた8編の連作小説が収められているのだが、舞台は戦国時代から現代までの約400年間にわたっており登場人物も多種…
1969年に刊行された野坂昭如の短編集。正直、彼の作品をあまり熱心に読んだ覚えはなく、短編集「アメリカひじき・火垂るの墓」は間違いなく読んでいると思うが、「エロ事師たち」はどうだったかなあ。したがって、本作を手にした動機も“野坂昭如の作品だから…
「桶川ストーカー殺人事件 遺書」に続く清水潔のノンフィクション作品。「隠蔽された北関東連続幼女誘拐殺人事件」というサブタイトルが付けられているが、前半の中心になるのは「足利幼女殺害事件」の犯人として収監されていた菅家利和氏に係る冤罪事件。一…
フェルナン・ブローデルの大著「物質文明・経済・資本主義 15—18世紀」の第一巻。この「物質文明・経済・資本主義 15—18世紀」は全三巻6分冊で構成されており、今回読んだのはそのうちの1分冊と2分冊目。社会を「物質生活(物質文明)−市場経済−資本主義…
英国人作家アラン・シリトーの短編集。表題作は映画化もされたとても有名な作品であり、昔から一度読んでみようと思っていたのだが、短編という手軽さが仇となり“いつでも読めるさ”と思っているうちに今日に至ってしまう。正直、あまり老人向けの作品とは思…
杉田敦という政治学者が選んだ丸山眞男の論文集。先日読んだ「後衛の位置から」が量的に物足りなかったので、丸山の明晰な文章をもうちょっと味わってみたいと思って手にしたのが本書。本棚から昔読んだハードカバーを引っ張り出してきても良かったのだが、…
ジョージ・オーウェルの書いたスペイン内戦従軍記。「動物農場」と「1984年」のどちらを読もうか考えていたときに知ったのが本書の存在であり、英国人であるオーウェルがあのスペイン内戦に義勇軍の一人として参加し、そのルポルタージュまで書いていたとい…
丸山真男が1982年に発表した論文集。といっても、“「現代政治の思想と行動」追補”という副題からも分かるとおり全体で200ページにも満たない文量であり、2編の論文と英語版「現代政治の思想と行動」への著者序文の他、附録として英語版「現代政治の思想と行…
“リタイアしてから読む作家”シリーズの第2弾は山本周五郎。「青べか物語」とどちらにするかちょっと迷ったのだが、まあ、時代劇っぽい方がより年寄り臭くて良いだろうということでこちらを選択。読み終えるまで知らなかったのだが、本作は江戸時代前期に仙…
清水潔というジャーナリストが書いたノンフィクション作品。1999年10月に埼玉県桶川市で起こった女子大生殺人事件を取材したものであり、所轄である埼玉県上尾署の杜撰な捜査等に対する批判が重要なテーマになっている。とはいっても、本書を手にした直接の…
ロバート・ペン・ウォーレンという米国人作家が書いたピューリッツァー賞受賞作。映画「オール・ザ・キングスメン(1949年)」の原作であり、おそらく映画の方はずっと昔に見ているはずなのだが、幸か不幸かストーリー等は全く記憶に残っておらず、新鮮な気…
著者の初期長編作品の中から「継ぐのは誰か?」と「果てしなき流れの果てに」の2編を収録した本。俺には“リタイアしてから読む作家”というのが何人か存在しており、今回の小松左京もそのうちの一人。彼の(短編については各種アンソロジーでいくつかお目に…
田中伸尚というノンフィクション作家が大逆事件の100年後に発表した作品。共謀罪に関する国会審議がやや強引に進められているということで、その悪用の先駆的事例(?)である大逆事件の勉強をしてみようと思い立ったのが本書を手にした主な理由。大逆事件や…
島崎藤村が46歳のときに発表した長編小説。今年のゴールデンウィークはかねてからの念願であった木曽路を歩いてくる予定なのだが、その前に藤村の作品をもう一つくらい読んでみようと思って手にしたのがこの作品。例によって予備知識ゼロの状態で読み始めた…
断続的に読んでいる加藤周一著作集の附録。本書に記載はないのだが、1976年から79年までの間、毎日新聞夕刊のコラムに匿名で掲載された文章をまとめたものだそうであり、一編当たりの文量は3ページにも満たないようなものばかり。“冗談”といってもユーモア…
グレゴリー・マグワイアという小説家が書いたミュージカル「ウィキッド」の原作。2013年の年末に見た劇団四季の「ウィキッド」は俺のお気に入りの一つなのだが、そこで描かれている“言葉を話す動物”が虐待を受けるエピソードが少々異質というか、いまひとつ…
高取正男という民俗学者が書いた我が国の神道に関する“名著”。著者自身による「あとがき」を読むと分かるのだが、本書は4つの別々の論文がベースになっており、一冊の本にまとめるに当たって「大幅に訂正し、加筆した」とはいうものの、4つの章ごとの独立…
「司政官 全短編」に続くKindle Unlimitedの2冊目。作者は、俺が若かった頃に“我が国では希少なハードSF界の旗手”として活躍が期待されていた堀晃であり、本作は彼の記念すべき長編第一作目だったと記憶している。内容は、銀河面を垂直に貫く直径1200万キロ…
眉村卓の“司政官シリーズ”に属するすべての短編を集録したもの。最近、“Kindle Unlimitedを30日間無料でお試しいただけます”というメールがちょくちょく届くので、年末年始のヒマ潰しにでもなればと思って申し込んでみたのだが、正直、俺のような年寄りが読…
「ハリー・ポッターと死の秘宝」の19年後を描いた舞台劇脚本の書籍化。昨年11月に発売されたものであり、既に読み終えてしまった妻&娘はその感想を話し合いたくてムズムズ。俺は映画を見るまで原作を読まない主義なのだが、本作の映画化の具体的なスケジュ…
ディケンズが「二都物語」に続いて発表した後期における代表作の一つ。彼の長編を読むのは「デイヴィッド・コパフィールド」、「二都物語」に続いてこれが3作目。いわゆる古典作品、それも長編に取り掛かろうとするときには、“不退転の決意”とは言わないま…
15世紀末、絶対王政への道を歩み始めた頃から現代までのフランス史を解説した本。2部構成になっており、第1部の「国民国家の成立と展開」は教科書的な視点からフランス近代史を俯瞰した内容になっている。アンシアン・レジーム→フランス革命→ナポレオン帝政…
ヴィクトル・ユーゴーが20代後半に発表した長編小説。ミュージカル版の「ノートルダム・ド・パリ」に興味を抱いたのは、今年の1月、東急シアターオーブの「ニューイヤー・ミュージカル・コンサート2016」でマット・ローランの歌う“踊って、僕のエスメラルダ…
ウンベルト・エーコの長編小説第2弾。本年2月の訃報に接し、彼の作品を一冊も読んでいなかったことに気付いて愕然。映画版の「薔薇の名前(1986年)」がとても面白かったので、いつか(もっと面白いに決まっている)原作の方も読んでみようと思っていたの…
自らもカトリック信者であった遠藤周作による宗教小説。このところキリスト教関係の勉強が滞っていたので、ちょっと目先を変えてこの有名な小説を読んでみることにした。遠藤周作の作品を読むのは(例によって)これが初めてであるが、文章は予想したよりず…
フェルナン・ブローデルが1976年に行った米国ジョンズ・ホプキンス大学での講演を記録したもの。本当は同じ著者による「地中海」の方を読んでみたかったのだが、全5巻に及ぶ大作をいきなり読破するのはなかなか大変そうということで、とりあえず、お手軽そ…
断続的に読んでいる加藤周一著作集の15巻目。いよいよ著作集の最終巻ということで、ここには著者が雑誌や新聞に連載していたエッセイ風の短い文章がたくさん収録されている。「私の広告文」なる一編には、出版社からの依頼によって書かれたものと思われる新…
吉川真司という歴史学者が書いた岩波新書の“シリーズ 日本古代史”の中の一冊。購入動機は単純であり、週末からの3連休に予定している2度目の奈良旅行のための事前学習。今回は、室生寺や長谷寺といったところをメインに見て回りたいと思っていたのだが、宿…
ユゴーの「レ・ミゼラブル」のストーリーを106のシーンに分け、あらすじと挿絵を添えて解説した作品。著者の鹿島茂という方は明治大学教授の仏文学者らしいのだが、作品をお読みするのは今回がはじめて。彼が、19世紀後半に出版された「ユーグ版」という挿絵…