殺人犯はそこにいる

「桶川ストーカー殺人事件 遺書」に続く清水潔のノンフィクション作品。

「隠蔽された北関東連続幼女誘拐殺人事件」というサブタイトルが付けられているが、前半の中心になるのは「足利幼女殺害事件」の犯人として収監されていた菅家利和氏に係る冤罪事件。一般のマスコミで取り上げられたのが2009年6月ということで俺の記憶にもしっかり残っていたが、当時、日本テレビに移籍していた著者の取材活動等が冤罪を晴らすに当たって大きな役割を果たしていたことは本書を読んで初めて知った。

しかし、これで一件落着とならないところは前作の「桶川ストーカー〜」と同じであり、後半部分では自らの失態が引き起こした責任を最小限度に食い止めようと逃げ回る警察&司法の醜悪な姿が克明に描かれている。正直、多くの国民(?)は“警察の威信”なんてこれっぽっちも信じていないのだから、間違ったら素直に謝れば良いと思うのだが、それが出来ないのは結局“我が身の保身”が本音だからなんだろう。

先の国会ではそんな警察&司法に対して“共謀罪”という危険極まりないツールを渡してしまった訳であるが、当面その廃止は難しいとしても警察による捜査の透明性の確保は(任意取調べの段階から)必要不可欠。法律の附則に明記された“取調べの録音・録画による可視化の検討”は是非とも早急に行って欲しいところであるが、まあ、自公と維新じゃ期待は出来ないだろうなあ。

ということで、本書の内容に関しては日本テレビの番組の中で数回にわたり詳しく取り上げられていたらしいのだが、“警察24時!”みたいな番組が大嫌いな俺はまったく見た憶えがない。そういった警察の提灯持ち番組と区別するためにも、今後は番組のタイトルに「清水潔の〜」という修飾語を是非とも付けて欲しいと思います。