加藤周一著作集 真面目な冗談

断続的に読んでいる加藤周一著作集の附録。

本書に記載はないのだが、1976年から79年までの間、毎日新聞夕刊のコラムに匿名で掲載された文章をまとめたものだそうであり、一編当たりの文量は3ページにも満たないようなものばかり。“冗談”といってもユーモアの気配は極めて希薄であり、エスプリの効いた辛辣な文章が(おそらく)掲載順に並べられている。

内容は多岐にわたっており、最早記憶に残っていないような時事ネタをベースにしたものも含まれているため、正直、読んでいてピンとこない文章も見受けられるのだが、これら一連のコラムを楽しむためにはそれなりの教養が必要であり、これが一般紙の夕刊に連載されていたのだから当時の大衆の知的水準は現在よりも高かったのかもしれないなあ。

また、現状に鑑みた場合、今から40年前には冗談のネタだと思われていたような事柄が現政権下において次々に“実現”されていることが悲しいくらいに良く分かる。ただし、さすがの加藤周一も、教育現場における教育勅語の復活に対して政府がお墨付きを与えるというブラック・ジョークは思い付かなかったようであり、う〜ん、冗談の先にはいったい何が待っているのだろう。

ということで、「国民の総意に基づくワイロ」なんかを読むと、森友学園問題に対して国民の怒りの声がいまひとつ盛り上がらない理由が良く理解できるところであり、事の善し悪しにかかわらず、選挙ではとにかく勝ち馬に乗って甘い汁を吸う、というのが我が国の麗しい伝統のようです。