近代フランスの歴史 −国民国家形成の彼方に−

15世紀末、絶対王政への道を歩み始めた頃から現代までのフランス史を解説した本。

2部構成になっており、第1部の「国民国家の成立と展開」は教科書的な視点からフランス近代史を俯瞰した内容になっている。アンシアン・レジーム→フランス革命→ナポレオン帝政→王政復古・7月革命→第二共和政→ナポレオン?世の即位と、王政、共和政、帝政の間をめまぐるしく移行した後、普仏戦争を経て2つの世界大戦を経験するという波瀾万丈の歴史は、正直、読んでいてとても面白い。

なにぶんエピソードが満載なため、例えば「レ・ミゼラブル」にも取り上げられた6月暴動に関しては「32年6月のパリの共和派の蜂起(P107)」としか言及されていないのだが、それが起きた時代背景等について手軽に調べられるのはとても便利であり、今後、フランスを舞台にした映画や小説を楽しむときの良い参考書になってくれそうである。

第2部の「もうひとつの近代フランス」には、女性、植民地、移民といったいずれも興味深いテーマごとに書かれた論文等が並べられており、第?部のような教科書的な視点からは見逃されやすい“弱者”の存在にも光を当てようとしている。

興味深かったのは、フランス革命にも大きな影響を与えた啓蒙思想が女性の権利には頗る冷淡だったとか、王党派よりも共和主義者の方が植民地政策に積極的だったという(不勉強の俺にとっては)少々意外な指摘であり、う〜ん、確かに「レ・ミゼラブル」のコゼットは精神的にほとんど成長しないんだよなあ。

ということで、島国根性からなかなか抜け出せないでいる我々にとって、“国民国家の超克”というテーマは雲の上のような話であり、現政権も世界的な移民問題対岸の火事としてしか捉えていないというのがお恥ずかしい現状。今後やるべきことは星の数ほどあるのだろうが、まずは悪名高き外国人技能実習制度の抜本的な改革に早急に手を付けるべきでしょう。