司政官 全短編

眉村卓の“司政官シリーズ”に属するすべての短編を集録したもの。

最近、“Kindle Unlimitedを30日間無料でお試しいただけます”というメールがちょくちょく届くので、年末年始のヒマ潰しにでもなればと思って申し込んでみたのだが、正直、俺のような年寄りが読みたくなる作品はあまり見当たらない。まあ、俺の検索が下手なせいもあるのだろうが、苦労してようやく見つけ出したのがこの作品。

さて、著者の代表作の一つでもある「消滅の光輪」は学生時代に楽しく読んだ覚えがあるのだが、シリーズに属する短編を読むのは今回がたぶん初めて。地球連邦軍による軍政に代わるものとして導入された司政官制度をテーマにした7つの作品が、発足直後の手探り状態を描いた「長い暁」から、制度の形骸化が明白になってくる「限界のヤヌス」まで、年代順に並べられている。

短編ということもあって、起承転結の結の部分が省略されたような作品がほとんどであり、まあ、余韻を残した幕切れといえば聞こえは良いのだろうが、正直、物足り無いといった印象の方が強いかなあ。また、前の作品で描かれたエピソードが後の作品に影響を与えるといった関係性が認められないため、作品集としての統一感は希薄であり、どうしても“寄せ集め”的な印象を読者に抱かせてしまうのが困りもの。やはり司政官シリーズは長編を読むのに限るということなんだろうか。

ということで、小松左京光瀬龍といったあたりの未読作品を定額で読めるならKindle Unlimitedにも魅力を感じるのだろうが、残念なことに彼等の作品はすべて対象外。この分でいくと、お試し期間の終了をもってKindle Unlimitedとはお別れということになりそうです。