グレゴリー・マグワイアという小説家が書いたミュージカル「ウィキッド」の原作。
2013年の年末に見た劇団四季の「ウィキッド」は俺のお気に入りの一つなのだが、そこで描かれている“言葉を話す動物”が虐待を受けるエピソードが少々異質というか、いまひとつ胸にストンと落ちてこないところがずっと気になっていた。そんなときに知ったのがこの原作本の存在であり、あまり評判がよろしくない点は気になるが、とりあえず読んでみることにした。
さて、内容はかなりグロテスクなイメージを伴ったダーク・ファンタジーといったところであり、正直、この作品を読んでミュージカルにしようと思った人間(=作詞作曲を手掛けたスティーヴン・シュワルツという人らしい。)の気が知れない。まあ、ミュージカル化に当たって大幅な脚色が施されているため、ストーリーはほとんど別物と言って良いくらいなのだが、ミュージカルの感動を期待して読むとエライ目に遭う。
まあ、「オズの魔法使い」をベースにしているため、ストーリーの結末に選択の余地が乏しいのは致し方ないのだが、それにしても一度テロリストの手先になったエルファバが、その後、修道院や辺境の地に建つ城の一室で隠遁生活を送るという展開には一貫性が感じられないし、この本を読む動機となった〈動物〉に関する記述も極めて中途半端。
確かにシズ大学における学友たちとの交流を描いた部分が一番面白いので、ここを中心にしてミュージカル版のストーリーを練り直したのだろうが、この原作からエルファバ&グリンダによる友情と成長の感動ストーリーをひねり出した脚本家のウィニー・ホルツマンの才能は賞賛されてしかるべきだと思う。
ということで、イディーナ・メンゼルやクリスティン・チェノウェスを配したオリジナル・ブロードウェイ・キャストによる「Wicked」のサウンドトラックCDは今や俺の愛聴盤の一つであり、劇団四季も良いけれど、いつかブロードウェイ・キャストによる「Wicked」の舞台も見てみたいと思います。