「レ・ミゼラブル」百六景

ユゴーの「レ・ミゼラブル」のストーリーを106のシーンに分け、あらすじと挿絵を添えて解説した作品。

著者の鹿島茂という方は明治大学教授の仏文学者らしいのだが、作品をお読みするのは今回がはじめて。彼が、19世紀後半に出版された「ユーグ版」という挿絵入りの本の中から180枚の挿絵を選び出し、それぞれに解説を加えているのだが、何といってもギュスターヴ・ブリアン等の手による木版の挿絵がとても味わい深い。

ミュージカルのポスター等にも使われた箒を持った幼いコゼットの絵のオリジナルも含まれているのだが、それ以外にも物語に登場する様々な名場面が力強いストッップモーションとして描かれており、映画ともミュージカルとも違う、よりジャン・バルジャン等が生きていた時代に近しい世界へと読む者を誘ってくれる。

物語のツボを巧みに捉えたあらすじや、分量的にもあまり出しゃばらないように配慮された解説もなかなか好ましく、本編とは違ってあっと言う間に読み終えてしまえるのだが、まあ、こういった“解説書”が成立するのも世紀の大長編「レ・ミゼラブル」ならではのことなんだろう。

ということで、まあ、著者の贔屓目もあるのだろうが、解説の中で度々言及されるヴィクトル・ユゴーの人となりがとても好ましく、読んでいる内にすっかり彼のファンになってしまった。値段が高いのでしばらく迷っていた「ノートル=ダム・ド・パリ」の単行本も、遂に注文してしまいました。