加藤周一著作集11「藝術の精神史的考察I」

断続的に読んでいる加藤周一著作集の11巻目。

この巻には、著者の現代藝術(文学を除く。)に関する論文が多数収められているのだが、長いものでも50ページくらいであり、数ページ程度の文章も多い。時期的にも、1950年代後半以降に発表されたものがほとんどということで、まあ、比較的取っ付き易いといって良いだろう。

しかし、該博な知識を誇る著者の興味は、建築、音楽、絵画、能を含む演劇、映画等々といった具合に非常に広範囲にわたっており、浅学非才の俺としてはとてもじゃないが全部には付き合いきれない。何度か名前の出てくる劇作家ポール・クローデルについては、その作品を観てみたいような気もするが、果たして今でも上演されているのだろうか。

ということで、ジャズやハリウッド映画といった大衆藝術への言及はほとんど無く、あまりお好きじゃなかったのかなあと思いながら読んでいたのだが、「あとがき」によると“私は藝術についての漠然として主観的なお喋りを、私自身のそれをも含めて、好まない”とのことであり、これらに関しては取り立てて言うべきことが無かったというだけなのかもしれません。