チェ 28歳の革命

2008年作品
監督 スティーヴン・ソダーバーグ 出演 ベニチオ・デル・トロデミアン・ビチル
(あらすじ)
1955年7月。アルゼンチン人の青年医師エルネスト・ゲバラベニチオ・デル・トロ)は、メキシコに亡命中の革命家フィデル・カストロデミアン・ビチル)に出会い、キューババティスタ独裁政権の打倒を目指す彼の考えに共感する。フィデル率いる7月26日運動の一員としてキューバに上陸したゲバラは、山中で繰り広げられるゲリラ戦に参加するが、その誠実な人柄と冷静な判断力とで次第に頭角を現していく….


キューバ革命の立役者の一人であるチェ・ゲバラの伝記映画の前編。

1955年7月のカストロとの運命的な出会いから始まり、翌年11月に決行されたキューバ上陸を経て、1958年12月のサンタクララ市占領までが描かれているのだが、途中、革命成功後に行われたゲバラの国連総会での演説の様子が、ニュース映画の如き白黒の映像で時折挿入されるのが良いアクセントになっている。

正直、ゲバラに関しては革命の闘士的なイメージしか持っていなかったため、喘息の持病を持つインテリ青年という彼の姿は少々意外だった訳だが、ゲリラ兵に対しても読み書き(=自分で考え、自分で判断する能力)を求めるあたりは彼のマルキストとしての面目躍如たるところで、とても面白かった。

本作でカンヌ国際映画祭男優賞を受賞した主演のベニチオ・デル・トロの演技は流石に素晴らしいものであり、そんなゲバラの姿をとても魅力的に演じている。実年齢ではこのとき既に40歳を超えているため、どう見ても“28歳”に見えないのが難点ではあるが、彼の人懐こい表情は多くの部下達から慕われたというゲバラのカリスマ的な資質を十分に実感させてくれる。

少々残念なのは、俺のようにキューバ革命に対する知識が乏しい観客にとっては、ゲバラカストロ以外の登場人物の見分けがつきにくいところであり、16歳と14歳でゲリラ兵に志願したあの兄弟たちがその後どうなったのかも良く判らない。まあ、軍隊モノの場合、みんな似たような格好をしているので仕方ない面もあるのだが。

ということで、先日、リビアカダフィ大佐が国連総会において1時間36分という異例の大演説を行ったことがニュースになっていたが、本作でゲバラが演説を行うシーンにその姿がダブって見えた。ゲバラの演説から早や45年の歳月が流れようとしている訳であるが、今、それを映画化することの意義、必要性が改めて証明されたと言って良いのでしょう。