21グラム

2003年作品
監督 アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ 出演 ショーン・ペンベニチオ・デル・トロ
(あらすじ)
前科者のジャック(ベニチオ・デル・トロ)は、キリスト教への信仰を通して更正を果たし、貧しいながらも懸命に家族を養っていたが、ある日、不注意から交通事故を起こしてしまい、マイケルという男性とその二人の幼い娘の命を奪ってしまう。一方、重い心臓病を患っていた大学教授のポール(ショーン・ペン)は、脳死状態となったマイケルの心臓の移植を受けて一命をとりとめる….


バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)(2014年)」が面白かったアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督の旧作。

題名の「21グラム」というのは、ダンカン・マクドゥーガルという医師が20世紀初頭に行った実験によって得られた“魂の重量”に由来するそうであり、本作は、マイケルという男性の命を奪ったジャックとその命を引き継いだポール、それにマイケルの妻であるクリスティーナ(ナオミ・ワッツ)の3人が繰り広げる愛憎劇を魅力的に描いている。

ストーリー自体は比較的単純なのだが、それを細かなエピソードに分解した上で、一見、順不同に並び替えるという凝った編集が行われているため、序盤ではどんなストーリーなのかなかなか理解出来ない。しかし、当然、エピソードの順序には細心の注意が払われている訳であり、見続けるにしたがって次第にストーリーが明らかになっていくという手法からは、まるでジクソーパズルを組み立てているときのような快感を味わうことが出来る。

まあ、クリスティーナをマイケルの代理人と考えれば、命を奪った者と奪われた者、そしてその命を引き継いだ者との三すくみ状態を描いているということになるのだろうが、たった21グラムしかないとはいえ、それを奪ったor失ったor手に入れたときに感じる命の重さは相当のもの。普通に生活しているときにはなかなかそれに気付かないんだけどね。

ちなみに、最後はポールの自殺によって21グラムは何処かに消えてしまうと思いきや、クリスティーナがマイケルの子を妊娠していたことが判明して一件落着。まあ、質量保存の法則が守られたのは目出度いのだが、それまでの重〜いストーリーからするとちょっと取って付けたような印象が残った。

ということで、ストーリーを理解した上でもう一度最初から見直せば、1回目では気付かなかった様々な発見があると思うのだが、結構見ていて疲れる作品なのでその試みはとりあえず後回し。でも、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督の作品は引き続き拝見させて頂きたいと思います。