加藤周一著作集12「藝術の精神史的考察II」

断続的に読んでいる加藤周一著作集の12巻目。

全体は5章に分かれており、1章から3章までが国内、4章と5章がヨーロッパの藝術を対象としているのだが、前者で一番面白かったのが「仏像の様式」。一昨年の奈良旅行では、家族で様々な仏像を見学したのだが、そのときに感じた興福寺東大寺の仏像と法隆寺のそれとの様式の違いなんかを思い出しながら、大変興味深く拝読させていただいた。

また、「日光東照宮論」では、ブルーノ・タウトというドイツ人建築家の見解を紹介しながら、我が郷土の誇り(?)である日光東照宮のことを“建築”ではなく、“江戸の工藝品のあつまり”と酷評しているのだが、残念ながらこれには俺も同意見。芭蕉が日光の建築について一切触れなかったことを“炯眼”と評しているのも面白い。

後者では、ファン・アイクターナーといった、去年、ロンドンのナショナル・ギャラリーで“現物”を拝見してきた画家や、個人的に最も気に入っている画家の一人であるルオーに関する評論を読むことができる5章が興味深い。ヨーロッパに住んでいると、こういった画家の作品を“まとめて”見られる機会も多いようであり、何とも羨ましいかぎりである。

ということで、また海外の有名美術館にも行ってみたいところであるが、なかなかそういう訳にもいかず、とりあえずは来年あたり、「日本の庭」で紹介されていた西芳寺修学院離宮龍安寺そして桂離宮といった京都の有名な庭を見てこようと思います。