富岡製糸場と達磨寺

今日は、家族と一緒に群馬県にある富岡製糸場と達磨寺に行ってきた。

昨年、世界遺産に登録された富岡製糸場は、北アルプス八ヶ岳方面に遠征する際、高速道路上で何度もその看板を見掛けたところであり、興味があると言っていた妻をいつか連れてこようと思っていた。山歩きには全く興味を示さない娘にもここなら付き合ってもらえそうであり、いつもよりちょっとだけ(?)早起きをしてもらって、いざ出発。

市営の宮本町駐車場に着いたのは午前8時半の頃であり、そこに車を置いて徒歩で富岡製糸場へ向かう。早朝ということで、道沿いにある飲食店等はまだ閉まっているところがほとんどだったが、富岡製糸場の正門前には既に50mくらいの行列が出来ており、依然としてそれなりの人気を維持しているらしい。

開場時刻の午前9時になるとようやく行列が動き出し、入場券を買って場内へ。まずは無料の解説ガイドツアーなるものに参加し、ボランティアらしき解説員の方の後について場内を一周する。ほとんどが屋外からの説明であり、建物の中に入れたのは繰糸場だけというのはちょっぴり物足りないが、レンガの積み方の説明など興味深いお話を聞くことが出来た。

まあ、この内容からすれば見学料500円というのは適当なところだと思うが、聞くところによると来月から一気に1,000円(+解説ガイドツアー代200円)にアップするそうであり、そうなるとちょっぴり不満の声が多くなるかもしれないなあ。いずれにしても、世界遺産が必ずしも優れた観光地ではないという当たり前のことをきちんと理解すべきなんだろう。

さて、事前学習によると近場で人気No.1らしい“カフェドローム”(=我々が入店したときには他にお客はいなかった。)で休憩した後、車で高崎市にある達磨寺へ向かう。このお寺は「高崎のだるま市」で有名なのだが、個人的に興味があるのは助監督時代の黒澤明が脚本を手がけた「達磨寺のドイツ人」の舞台になったことであり、その主人公のモデルになったブルーノ・タウトが2年間滞在した“洗心亭”という建物が今でも残っているらしい。

ちょっぴり急な山道を上った先にある駐車場に車を止め、まずは達磨寺の本堂に当たる霊符堂にお参りをする。その隣にある達磨堂には全国各地の様々なダルマがところ狭しと展示されており、福田、中曽根、小渕といった歴代総理の名前の入った大ダルマが並んでいるのはいかにも群馬県のお寺らしい。

一番高いところにある喫茶店「だるだる」で休憩した後、いよいよお目当ての洗心亭へ。残念ながらこちらも内部を見ることは出来なかったが、外観はこじんまりした普通の民家であり、世界的建築家のイメージからほど遠いあまりの“質素さ”はかえって衝撃的。あまり幸福とはいえなかったタウトの晩年を思い、少々しんみりした気持ちになってしまった。

ということで、黒澤の「達磨寺のドイツ人」は、“敵か味方か”という観点からしか外国人を評価できなかった戦前の日本人がテーマになっているのだが、最近の従軍慰安婦をめぐる議論なんかを聞いていると、それからあまり進化していないような気がしてくるのがとても残念。日本文化を愛すると言いながら、日光東照宮にはしっかりダメ出しをしたタウトの誠実さを見習いたいものです。