ナッシュビル

1975年作品
監督 ロバート・アルトマン 出演 ヘンリー・ギブソン、ロニー・ブレイクリー
(あらすじ)
カントリー&ウェスタンのメッカとして有名なテネシー州ナッシュビル。そこでは、大統領候補者ハル・ウォーカーの選挙キャンペーンの一環として行われるコンサートの準備が進められており、大御所のヘブン・ハミルトン(ヘンリー・ギブソン)や久しぶりにナッシュビルに帰ってきた美人歌手バーバラ・ジーン(ロニー・ブレイクリー)等に対する出演交渉が行われていた….


今週のアルトマン作品は、ニューヨーク映画批評家協会賞の作品賞&監督賞に輝く名作。

本作は、後に彼の十八番となる“群像劇”のスタイルを取り入れた最初の作品ということになるのだろうが、初めてということで、数多い登場人物のキャラクターが互いにカブらないように細心の注意が払われており、見ていて混乱してしまうような心配は全く無用。こんなことなら、封切当時、映画館で見ておくんだった。

特典映像に入っていた監督へのインタビューによると、本作の脚本は、下調べのために事前にナッシュビルに送り込んでおいたスタッフの日記がベースになっているそうであり、“群盲、象を撫でる”の反対で、一見無関係と思われる些細なエピソードを積み重ねていくことによって、ナッシュビル、南部、そしてアメリカの“今”の姿を描いていく。

当然、多くのカントリー&ウェスタンが歌われ、魅力的なメロディーラインを持つ曲も少なくないのだが、字幕に表示されるその歌詞は極めて保守的な内容のものが多く、まあ、ある程度の予備知識はあったものの、改めて驚いてしまう。これでは、リンダ・ロンシュタットやディキシーチックスが苦労する筈である。

そんなカントリー&ウェスタン界の大御所役として出演しているのが、小男のヘンリー・ギブソンであり、“どこかで見たことのある顔だなあ”と思っていたら「ブルース・ブラザース(1980年)」でネオナチのリーダーを演じていた人。きっと、とても冗談の分かる良い人なんだろう。また、公開当時、大人気だったカレン・ブラックもバーバラのライバル役で顔を見せており、何と自作の曲を数曲披露してくれている。

ということで、映画の方は、悲劇的な事件が起きた後、“It don't worry me”という慰めのリフレインを持った歌の大合唱で幕を閉じるのだが、よくよくその歌詞を聴いてみると“You may say I ain't free, it don't worry me”となっており、結局、慰めなんか何処にもありませんでした。