Mank/マンク

2020年
監督 デヴィッド・フィンチャー 出演 ゲイリー・オールドマンアマンダ・セイフライド
(あらすじ)
“マンク”こと脚本家のハーマン・J.マンキーウィッツ(ゲイリー・オールドマン)は、新進気鋭の映画作家オーソン・ウェルズから彼の初監督作品の脚本を依頼される。テーマは“新聞王”と呼ばれた人物の波乱の生涯であり、モデルになるのは実在の新聞王であるウィリアム・ランドルフ・ハースト。一時期ではあるが、マンクはハーストの傘下で仕事をした経験があり、彼の愛人であるマリオン・デイヴィスアマンダ・セイフライド)とも親しい間柄だった…


市民ケーン(1941年)」の共同脚本家であるハーマン・J.マンキーウィッツの伝記映画。

今年のアカデミー賞で作品賞をはじめとする10部門にノミネートされた話題作であり、Netflixで見られるのはかなり前から知ってはいたのだが、“難解”との前評判に尻込みをしてしまい、本日、何とか視聴にこぎ着ける。しかし、内容は極めて興味深いものであり、正直、今まで見た今年のアカデミー作品賞ノミネート作品の中ではこれが一番面白かった。

さて、主人公のマンクは著名な映画監督ジョセフ・L.マンキーウィッツの実兄であり、その他にも彼の周囲には当時のハリウッドを代表する名士たちがゾロゾロ。本作で批判的に取り上げられているハースト、ウェルズ、ルイス・B.メイヤー、アーヴィング・タルバーグにしても、まあ、その人間性はともかく、いずれもハリウッド映画の歴史に名を残す大物ぞろい。

そんな彼らに比べてしまうと、正直、主人公の経歴が相当見劣りするのは否定し難いところであり、彼が脚本を手掛けた作品をざっと見てみても知っているのは「市民ケーン」と「打撃王(1942年)」くらい。おそらく、ウェルズが主人公に脚本を依頼したのは、その才能に惹かれたというよりも、ハーストとの微妙な人間関係に興味を持ったからなのではなかろうか。

しかし、本作における主人公の決断が立派な“ハチの一刺し”であることは間違いないところであり、あくまでも弱者の立場に寄り添ったその勇気ある行動は十分アカデミー脚本賞に値する。そのへんの事情については「『市民ケーン』、すべて真実」という本に詳しく書かれているそうであり、機会があればその本も読んでみようと思う。

ということで、主人公の口述筆記を担当する有能な助手リタ・アレクサンダー役でリリー・コリンズという女優さんが出演しているのだが、モノクロ映像のせいもあって、これが若き日のオードリー・ヘップバーンを彷彿させる凛々しいお顔立ち。Netflixで配信中の「エミリー、パリへ行く」という連続ドラマにも主演しているそうであり、早速、拝見させて頂こうと思います。