マンチェスター・バイ・ザ・シー

2016年作品
監督 ケネス・ロナーガン 出演 ケイシー・アフレックルーカス・ヘッジズ
(あらすじ)
アメリカのボストン郊外でアパートの便利屋をしているリー・チャンドラー(ケイシー・アフレック)の元へ、持病の悪化により兄のジョーが死亡したとの知らせが届く。急遽、生まれ故郷である港町マンチェスター・バイ・ザ・シーに駆け付けた彼は、亡兄の弁護士から甥である16歳の少年パトリック(ルーカス・ヘッジズ)の後見人に指名されていることを告げられるが…


昨年のアカデミー賞ケイシー・アフレックが主演男優賞に輝いた作品。

リー自身、数年前までは生まれ育ったその町で妻子とともに暮らしていたという設定であり、 “現在”のシーンにフラッシュバックのような小間切れの形で割り込んでくる“過去”の映像によって、彼が故郷を出て行かなければならなくなった悲しい秘密が次第に明らかになっていく。

最初のうちはこの現在と過去との見分け方が分からずにちょっと混乱してしまうのだが、すぐに簡単に見分けられるようになり、そのポイントになるのが主人公の表情。現在のリーはとても無愛想で笑顔もほとんど見せてくれないのだが、過去の彼はむしろ表情豊かで人付き合いも良かったらしく、この落差の大きさが彼を襲った悲劇の大きさを物語っている。

昨日、拝見させて頂いた「ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男(2017年)」を見ても分かるように、最近のアカデミー主演男(女)優賞の選考では“別人になりきること”が重要なポイントになるらしいが、本作の現在と過去における主人公は正に別人であり、昨年のアカデミー賞ではケイシー・アフレックによるこの難しい“演じ分け”が高く評価されたのだろう。

まあ、結果的には主人公はその悲劇を乗り越えることが出来ず、再びボストンへと帰って行くことになるのだが、素直で適度にヤンチャなパトリック少年との交流は主人公の心の傷を癒やすのに有効だったようであり、数年後の楽しい再会を期待させてくれるラストもなかなかの好印象だった。

ということで、そのパトリックを演じていたルーカス・ヘッジズという俳優さんは「スリー・ビルボード(2017年)」にもフランシス・マクドーマンドの息子役で出ていたが、アカデミー助演男優賞にノミネートされた本作での演技も文句なしに素晴らしい。6月公開予定の「レディ・バード(2017年)」にも出演しているようであり、その作品での再会を楽しみにしています。