ザ・バンド かつて僕らは兄弟だった

2019年
監督 ダニエル・ロアー 出演 ロビー・ロバートソン、レヴォン・ヘルム
(あらすじ)
1943年にカナダのトロントで生まれたロビー・ロバートソンは、13歳のときにラジオで聴いたロック・ミュージックに衝撃を受け、ギタリストとして音楽活動を開始する。1959年に人気歌手ロニー・ホーキンスに楽曲を提供したロビーは、それがきっかけとなってホーキンスのバックバンド“ザ・ホークス”に参加。すでにそのバンドのドラマーとして活躍していたレヴォン・ヘルムと運命的な出会いを果たすことになる…


ザ・バンドの結成から解散までの経緯を描いたドキュメンタリー映画

正直、ザ・バンドの大ファンという訳ではないのだが、1974年に発表されたディランとのライブ盤「Before the Flood」や解散コンサートの様子を収録した「The Last Waltz」は、今でも時々山歩きのBGM(?)に利用させて頂いている愛聴盤であり、本作がU-NEXTのラインナップに加えられるのを待って早速見てみることにした。

さて、ロビー・ロバートソンとレヴォン・ヘルムの不仲はファンの間では有名な話であるが、本作の原題は「Robbie Robertson and The BAND」であり、明らかに前者の視点に立って描かれていると言って良いだろう。したがって、ロビー・ロバートソン抜きで1983年以降に行われた“再結成”には全く触れられておらず、1976年のラスト・ワルツ以降に関しては各メンバーの消息を簡単に紹介しただけであっさり幕を閉じてしまう。

しかし、ラスト・ワルツまでの(表の?)歴史については古くからのロック・ファンにとっては周知の事実であり、本作を見ていても“懐かしさ”は感じるものの、新たな驚きはほぼ皆無と言ってよい。本作で初めてザ・バンドを知る人たちにとっては有益な内容なのかもしれないが、う~ん、そんな人間って本当にいるのかしら?

特に残念だったのはレヴォン・ヘルム側からの生の主張、反論が全く取り上げられていないところであり、晩年の彼が経済的に困窮していたという印象だけを与えたまま終わらせてしまうのは、まさに“死人に口なし”以外の何ものでもない。これは「ボヘミアン・ラプソディ(2018年)」を見たときにも感じたことであるが、遺族や友人へのインタビュー等、既に亡くなっている側の主張もきちんと紹介すべきだと思う。

ということで、“The Weight”にしても“The Night They Drove Old Dixie Down”にしても、これらが名曲に仕立て上げられる過程においては間違いなくメンバー全員のアイデアやテクニックが費やされている筈であり、特にリード・ボーカルを担当したリヴォン・ヘルムの貢献は決して作詞作曲を担当したロビー・ロバートソンのそれに引けを取るものではない。そう考えると著作権というものはなかなか厄介な問題なのかもしれません。