つぐない

2007年作品
監督 ジョー・ライト 出演 キーラ・ナイトレイジェームズ・マカヴォイ
(あらすじ)
1935年の英国。タリス家の末娘ブライオニーは作家になるのを夢見る13歳の女の子。彼女の姉のセシーリア(キーラ・ナイトレイ)は使用人の息子ロビー(ジェームズ・マカヴォイ)とお互いに惹かれ合っていたが、幼さ故に二人の関係を理解できないブライオニーはロビーを変質者だと思い込み、たまたま目撃した婦女暴行事件の取調べにおいて犯人はロビーだと警察に証言してしまう….


ジョー・ライトキーラ・ナイトレイのコンビによる第2作目。

前作の「プライドと偏見(2005年)」が妻にも好評だったため、二匹目のドジョウを期待して鑑賞してみたのだが、原作となる小説は2001年に発表されたものであり、時代設定も比較的新しい。そのため、セシーリアとロビーという若い二人の恋の障壁になるのは、大時代的な“身分”の問題ではなく、男女の性愛を知らない少女が吐いた“嘘”。

その後は、ブライオニーの証言によって仲を引き裂かれてしまった恋人たちの悲劇的な末路と、自分の過ちに気付き、何とかそのつぐないをしようと苦悩する少女の様子とが交互に描かれているのだが、圧倒的に凄いのは、間もなく勃発した第二次世界大戦に刑務所から送り込まれたロビーの体験。

ナチス・ドイツ電撃戦に敗れた英国軍は、フランスのダンケルクに追い詰められてしまい、いつ来るのか分からない本国からの救助船を絶望的な状況の中で待つことになるのだが、この海岸近くにたむろする大勢の敗残兵の描写は迫真的な中にも詩情が漂っており、その高い芸術性は文句なしに素晴らしい。

正直、ストーリーを説明するだけであればここまで手間暇をかける必要は無かっただろうし、このシーンのあまりの素晴らしさのせいでキーラ・ナイトレイ扮するセシーリアの存在が霞んでしまったという副作用もあるのだが、おそらくこのシーンのおかげで本作は人々の記憶に長く残る作品になったのではなかろうか。

ということで、同じシーンを視点を変えて2度描くという演出が序盤で2回程使われており、ちょっと直截的に過ぎるような気がしたのだが、実はこれが終盤のトリックの“予告”みたいなものになっており、まあ、そういうことなら仕方ないのかなあ。いずれにしても、監督のジョー・ライトの実力をちょっと見直した作品でありました。