僕のワンダフル・ライフ

2016年
監督 ラッセ・ハルストレム 出演 K.J.アパ、ブリット・ロバートソン
(あらすじ)
優しいイーサン(K.J.アパ)の飼い犬として充実した犬生(?)を送ってきたゴールデン・レトリーバーのベイリーも寄る年波には勝てず、足のケガでアメフト選手になる夢を諦めた失意のイーサンを遺して天国へと旅立ってしまう。しかし、警察犬のエリーとして生まれ変わった後もイーサンのことが忘れられず、その後、ウェルシュコーギーのティノや雑種のワフリーへと転生を続けていくうちに…


続編である「僕のワンダフル・ジャーニー(2019年)」が絶賛上映中のファミリー映画。

天気予報によると本日夕刻には超大型の台風19号が本土に上陸するらしく、TVでは数日前からこのニュースで持ちきり。仕方がないので、窓ガラスに飛散防止用の養生テープを貼ったり、カーポートの支柱を立てたり、自転車を玄関に収納したり等々、早朝から万全の態勢を整えてみたのだが、それが一段落すると何もすることがなくなってしまう。

そこで、台風の不安を紛らすという趣旨も含めて本作を鑑賞してみたのだが、その効果は期待以上であり、約2時間の間、台風の存在をきれいサッパリ忘れさせてくれる。主人公である犬のベイリーの気持ちを声優さんが全部言葉にしてしまうという手法は、確かに安易としか言いようがないが、今のような緊張した状況下では“観客に要らぬ負担は掛けない”という老匠ラッセ・ハルストレム監督の優しさがとても身に沁みる。

勿論、犬が犬として生まれ変わり、しかも前世の記憶を失わないという設定にしても人間側の一方的な思い込みに過ぎない訳であるが、まあ、そんなことを指摘する方が野暮だと思わせてしまう何かが本作に備わっていることも事実であり、おそらくそれは“誠実さ”に極めて近い感覚であるような気がする。

老境の域に差し掛かりつつあるイーサンが、生まれ変わったベイリーとの邂逅をきっかけにして昔別れた恋人と結ばれるという結末は、彼の華やかさとは縁遠かった半生を思えば決して過分なハッピーエンドとは思えず、(犬たちの可愛らしさに幻惑された訳ではないと思いたいが)不覚にも(?)素直に感動してしまった。

ということで、関東・東海地方を直撃した台風19号は河川の氾濫等の大きな被害を各地にもたらした訳であるが、こういった災害の対策・復旧状況を見ていて痛感するのは、現在の我が国における“余裕”の無さ。行き過ぎた競争のせいでギリギリの日常を送っている国民に対し、自己責任による災害対策・復旧を押し付ける社会というのは、もはや国家の名に値しないのではないでしょうか。