素晴らしき哉、人生!

1946年作品
監督 フランク・キャプラ 出演 ジェームズ・スチュワートドナ・リード
(あらすじ)
田舎町で庶民相手の小さな住宅ローン会社を営んでいるジョージ・ベイリー(ジェームズ・スチュワート)が人生に絶望し、自殺を企てているという情報が天国に届く。彼を救うために二級天使のクラレンスが地上へ派遣されることになり、予備知識としてジョージの過去を調べてみたところ、彼の人生が、他人の幸せのために自分の夢や理想を犠牲にし続けてきたものであることが明らかになる….


我が家での名作鑑賞会の第4弾は、あちらではクリスマス映画の定番になっているらしいフランク・キャプラの代表作。

昨日、妻と山歩きをしているときにひょんなことから“クリスマス映画”の話題になったのだが、我が家の本棚に並んでいるDVDのうち、それに該当しそうなのはマイケル・カーティスの「ホワイト・クリスマス(1954年)」とこの作品くらい。そんな話をしていたら、妻が本作に興味を示したため、クリスマスにはちょっと早いが、久しぶりの名作鑑賞会開催になった次第。

さて、フランク・キャプラは俺が最も敬愛する映画監督の一人であり、本作もこれまでに何度となく拝見させていただいているのだが、この作品に対する個人的な評価は世評と少々異なっており、もちろん駄作だとは思わないものの、傑作とも思えない。

まあ、その理由はいろいろあるのだが、一番の問題は主人公ジョージ・ベイリーの様々な“挫折感”というものが、いまひとつピンと伝わってこないところ。確かに、大学に進学したり、世界各地を旅行したり、建築家になったりという彼の夢はことごとく叶わなかったのだが、その代わりに素晴らしい家庭と立派な職業を手に入れたのだから、そう自己憐憫に浸る必要は無いと思う。

また、彼が人生に絶望する直接の原因が、そういった彼の生き方とは全く関係ない些細な事故である点もストーリー上の大きな弱点であり、「スミス都へ行く(1939年)」のような完璧な脚本と比べると、どうしても見劣りがしてしまう。

ということで、IVCのDVDで見たために最初に淀川長治氏の解説が入っているのだが、不思議なことに「毒薬と老嬢(1944年)」の話がほとんどで本作の内容については全く触れられていない。ひょっとすると、彼も本作に対しては何らかの不満を抱いていたのかもしれません。