スミス都へ行く

1939年作品
監督 フランク・キャプラ 出演 ジェームズ・スチュワートジーン・アーサー
(あらすじ)
ある州の上院議員が急死し、その後釜に、政治に関しては全くの素人である無名の新人ジェフ・スミス(ジェームズ・スチュワート)が指名される。実は、この州で予定されているダム事業の裏側では地元の有力者の利権に絡んだある陰謀が進められており、それが上院の審議でバレないようにするためには、彼のように政治や社会に疎い“イエスマン”が必要だったのだ….


我が家での名作鑑賞会の第三弾は、人情喜劇の名手フランク・キャプラの最高傑作。

俺が初めてこの作品にお目にかかったのは、NHKの教育テレビでやっていた「世界名作劇場」においてであり、今から30年くらい昔のことになる。その数年後(?)、二度目に放映された時にはビデオに録画させていただき、それが擦り切れる(=実話である。)まで何度も見返した覚えがある。

名作ということで見せ場は少なくないのだが、お気に入りのシーンは見るたびに少しずつ変化していき、今一番好きなのは、秘書のサンダース(ジーン・アーサー)がスミスの母親(ボーラ・ボンディ)に初めて電話をするシーン。やや緊張気味のサンダースに対し、スミスの母親が何気なく“クラリッサ”と彼女のファーストネームで呼び掛けるのだが、それを聞いて思わず“マム!”と口走ってしまうサンダースの弾けるような笑顔がとても可愛らしい。

さて、キャプラにとって、一度絶望した男が愛する女性の助けを得て立ち直るというストーリーは「オペラ・ハット(1936年)」で経験済みであり、それをベースに練り上げた本作の脚本は非の打ち所がないくらい素晴らしいのだが、残念なのはこのIVCのDVD用に新しく付けられた字幕のレベルが全くそれに追い付いていないところ。

文句を付けたい点は色々あるが、最悪なのは“lost cause”を“失われた大義”と訳しているところであり、これでは何を言っているのかさっぱり分からない。世界名作劇場ではもっと直截的に“負け試合”みたいな意味で使っていた筈であり、“隣人のためなら負けると分かっている勝負でも喜んで闘う”という本作のテーマが見ている人に伝わらなくては、せっかくの名演説も何の役にも立たないだろう。

ということで、見終わってからの娘の感想は“とても面白かった。カサブランカより好きかもしれない”というほぼ絶賛に近い高評価。お礼に、本作のペイン上院議員と「カサブランカ(1942年)」のルノー署長は同じ役者さんが演じていることを教えてあげたら、とても驚いてくれました。