シン・レッド・ライン

1998年作品
監督 テレンス・マリック 出演 ショーン・ペンジム・カヴィーゼル
(あらすじ)
1942年、トール中佐の率いるアメリカ陸軍C中隊は、日本軍が作った飛行場を破壊するため、ソロモン諸島にあるガダルカナル島への上陸作戦を開始する。しかし、見晴らしの良い丘陵地帯の中腹にトーチカを設置した日本軍の激しい反撃の前に、作戦の遂行は困難を極め、部下を犬死させたくないスターロス大尉は、功を焦るトール中佐の強引な突撃命令を敢然として拒否する….


ツリー・オブ・ライフ(2011年)」のテレンス・マリックによる戦争映画。

太平洋戦争中に行われたガダルカナル島の戦いを題材にしているのだが、手法は群像劇風であり、トール中佐やスターロス大尉以外にも、叩き上げの軍人であるウェルシュ曹長ショーン・ペン)やサボタージュの常連であるウィット二等兵ジム・カヴィーゼル)等、大勢の兵士たちが登場する。

戦争映画だけに基本となるストーリーは明快であり、それを説明するためのセリフもちゃんと用意されているため、「ツリー・オブ・ライフ」に比べれば随分と“普通の映画”らしいのだが、宗教的な内容のモノローグを多用したり、随所に本筋とは直接関係のない映像を挿入したりと、テレンス・マリックらしい演出はこちらでも多々見受けられる。

特に目立つのは、映画的な面白さをある程度犠牲にしつつも、戦争をより自然な形で描こうとする姿勢であり、まあ、実際に戦争を経験したことがない俺が言うのもおこがましいが、極端なヒーローが登場しない本作の戦闘シーンは、現実のそれにかなり近いような気がした。(部下思いのスターロス大尉も、決して英雄として描かれている訳ではない。)

なお、ネット上では、日本兵の描写に違和感があるという批判が少なからず見受けられるのだが、おそらくその原因は脚本や演出にあるのではなく、本作が一貫してアメリカ軍の立場から描かれているため、同じ日本人を“敵”というフィルター越しに見なければならないことに起因しているのだと思う。

ということで、青空の下に広がる緑の丘陵地帯という、ハイキングにでも似合いそうな舞台で繰り広げられる凄惨な殺し合いは、もうそれだけで戦争が大きな間違いであることを雄弁に物語っており、そのことに関しては全く異論ないのだが、まあ、それと映画の面白さとは別モノであり、この作品をもう一度見てみようという気持ちはおそらく湧いてこないでしょう。