ヤンキー・ドゥードゥル・ダンディ

1942年作品
監督 マイケル・カーティス 出演 ジェームズ・キャグニーウォルター・ヒューストン
(あらすじ)
ヴォードヴィル芸人であるジェリー(ウォルター・ヒューストン)とネリーのコーハン夫妻の長男として生まれたジョージ(ジェームズ・キャグニー)は、妹のジョシーも加わった“フォー・コーハンズ”の一員として子供の頃から全国各地を巡業して回る毎日。彼の自信過剰気味の言動は周囲と度々問題を起こすものの、主演から演出、脚本、作曲までを一人でこなすその才能は次第に周囲に認められるようになる….


ジェームズ・キャグニーマイケル・カーティスと組んで発表したミュージカル映画

とはいっても、内容はジョージ・M.コーハン(=俺は知らなかったが、“ブロードウェイ・ミュージカルの父”といわれた大物らしい。)という実在の人物の伝記映画であり、久方ぶりに舞台にカムバックした彼が、突然、大統領からホワイトハウスに招待され、そこでこれまで自分が歩んできた人生を回想する、といった趣向でストーリーが始まる。

したがって、普通のミュージカル映画のように出演者が突然街中で踊り出すというようなシーンは登場せず、本作で披露される歌や踊りのほとんどは劇中のヴォードヴィルショーの舞台の上で行われる。そして、我々はそれを劇場の観客と同じような目線から鑑賞することになる訳であり、ミュージカル映画ならではの非日常的な楽しさが減った分、日常的なドラマ部分の比重が増えた格好になっている。

そのことからすれば、演技力の点でもまったく問題のないジェームズ・キャグニーを本作の主役に選んだことは大正解と言うべきなんだろうが、生憎とそのドラマ部分には、製作当時の世相が反映し、愛国主義的なメッセージがこれでもかというくらいに込められており、これが何とも鼻につく。

同じDVDに収録されていた資料映像によると、当時、彼には共産主義者の疑いが掛けられており、その疑いを晴らす目的で本作に出演したらしいのだが、それにしても愛国主義=戦争肯定みたいな、何の葛藤の跡も見られない能天気なアメリカ賛歌は見ていてあまり気持ちの良いものではなく、ジョージ・M.コーハンのキャラクターも好きになれなかった。

ということで、ヴォードヴィル出身であるキャグニーのダンスは流石に達者なものではあるが、一時代前と思われるコーハンのダンススタイルを真似ているせいか、コミカルで楽しい半面、力が入り過ぎていてエレガントさが感じられない。ただし、本作のラスト近くで、年老いたジョージがホワイトハウスの長い階段をタップを踏みながら降りてくるシーン(=キャグニーのアドリブ?)があるんだけど、ここでのさりげないタップはとてもカッコ良かったです。