2011年作品
監督 ミシェル・アザナヴィシウス 出演 ジャン・デュジャルダン、ベレニス・ベジョ
(あらすじ)
1927年のハリウッド。サイレント映画の大スターであるジョージ・ヴァレンティン(ジャン・デュジャルダン)は、いまや飛ぶ鳥を落とす勢いであり、駆け出し女優のペピー・ミラー(ベレニス・ベジョ)もそんな彼に憧れを抱いていた。しかし、映画の主流がトーキーへと移り変わる中、アーティストとしての矜持からサイレント映画に固執していたジョージは、瞬く間にスターの座から転落してしまう….
第84回アカデミー賞で作品賞、監督賞、主演男優賞に輝いたフランス製サイレント映画。
サイレントに固執してどんどん落ちぶれていくジョージとは対照的に、ペピーはトーキー映画の世界で人気女優への階段を一気に駆け上っていく。心優しいペピーは、ジョージのプライドを傷つけないよう、陰から彼の生活を助けていたのだが、その事実に気付いてしまったジョージは絶望のあまり自殺を企てるって、まあ、このへんのストーリーは名作「スタア誕生(1937年)」の二番煎じ。
しかし、本作にバッドエンドは似合わないということで、この状況からどうやってハッピーエンドへと繋げていくのか、残り時間を心配しながら興味深く見守っていたのだが、ここで登場するのが一発逆転の華麗なタップダンス! ジョージが、アステアばりのミュージカル・スターとして復活を遂げることを予感させながら、見事なタイミングで映画は終わる。
白黒のサイレント映画ということで、我が国での興行成績は振るわなかったようであるが、俺のようなオールドムービー・ファンにとってはとても楽しい作品であり、古き良き時代のハリウッド映画に対する製作サイドの愛情がヒシヒシと伝わってくる。まあ、さらに年長の世代から言わせると、“本物のサイレント映画の素晴らしさは本作の比ではない”ってことになるのかもしれないけどね。
主演のジャン・デュジャルダンは、アカデミー主演男優賞に恥じない堂々とした演技を披露してくれており、貴重な二枚目コメディアンとして今後の期待大。相手役のベレニス・ベジョは、ちょっと現代的過ぎる容姿が気になっていたのだが、ラストのタップダンスは見事であり、個人的にはこれだけでも合格点を差し上げたい。
ということで、サイレントからトーキーへ変わる際、“観客が想像する余地を狭めるのは芸術的でない”という批判があったらしいのだが、情報量が増えること自体は決して悪いことではなく、使い方によっては、それによってさらに想像の翼が広がっていく場合もあるだろうと思います。