ブロードウェイ・メロディ

1929年作品
監督 ハリー・ボーモント 出演 ベッシー・ラヴ、アニタ・ペイジ
(あらすじ)
スターになることを夢見てニューヨークにやって来たハンク(ベッシー・ラヴ)とクィニー(アニタ・ペイジ)のマホーニー姉妹。姉ハンクの婚約者である歌手のエディが作曲した“ブロードウェイ・メロディ”のコーラス担当として興業主のザンフィールドに売り込む計画を立てるが、久しぶりに再会したエディは見違えるような美女に成長した妹クィニーを見て一目惚れしてしまう….


世界初のトーキー映画と言われる「ジャズ・シンガー(1927年)」の2年後に公開された全編トーキーによる初のミュージカル映画

記念すべきMGMミュージカルの第一作目であり、先日、舞台を拝見した「SINGIN' IN THE RAIN 〜雨に唄えば〜」でも取り上げられていた作品であるが、全編を通して見るのはこれが初めて。製作された年代から考えて大した作品ではないだろうが、まあ、お勉強ということで見てみたのだが…

予想どおり、サイレント時代のスタイルを引きずったような演出は面白味に欠け、正直、相当古臭い。また、それ以上に悲惨なのが素人臭さ丸出しのレビュー・シーンであり、ダンスのレベルは本作の4年後に公開された「四十二番街(1933年)」と比べても格段に落ちる。二流の(?)バレエ・ダンサーの応援を頼んだらしく、トウシューズを履いてタップダンスを踊るという珍しいシーンも登場するのだが、正直、痛々しすぎて見ていられなかった。

しかし、意外にしっかりしたストーリーがせめてもの救いであり、憎からず思っているエディのことを忘れるために自ら色事師の魔の手に嵌まっていく妹クィニーの健気さや、すんでのところで二人の気持ちに気付き、愛するエディに対して心にも無い冷たい言葉を投げつける姉ハンクの男気(?)は、まあ、ありきたりではあるものの、なかなか感動的。これでエディ役の俳優の演技がもう少し上手ければ、言うこと無かったんだけどなあ。

ということで、「四十二番街」が公開された1933年にはフレッド・アステアがスクリーン・デビューを飾っているし、その3年後にはレビュー映画の傑作「巨星ジーグフェルド(1936年)」が公開されている。要するに、ミュージカル映画は10年もしない短期間の間に驚異的な進化を遂げた訳であり、そんな実感を得るためにも見ておいて損の無い作品だと思います。