エレニの帰郷

2008年作品
監督 テオ・アンゲロプロス 出演 ウィレム・デフォーイレーヌ・ジャコブ
(あらすじ)
東西冷戦最中のソ連に取り残された恋人エレニ(イレーヌ・ジャコブ)を救い出すため、偽のパスポートを使って密入国を企てたスピロスは、スターリンの死んだ日に彼女との再会を果たす。一時の逢瀬によりエレニはスピロスの子をお腹に宿すが、その直後、警察に逮捕されて再び離ればなれになってしまい、シベリアに送られた彼女はそこで親切なユダヤ人のヤコブに出会う….


ギリシャの巨匠テオ・アンゲロプロスの遺作となった作品。

我が家でのフレッツ光の開通から1年余、遅まきながら茶の間のTVをインターネットに繋いでみた。何が出来るのか色々いじっていたところ、“TSUTAYA TV”なる動画配信サービスを利用できることが分かったのだが、TVのリモコンを使っての検索が面倒なためになかなか見たい作品が探せない。そんなときにたまたま目にとまったのがこの作品であり、まあ、ものは試しということで視聴してみた次第。

さて、視聴自体に問題は無かったのだが、初めて見るアンゲロプロス作品はなかなか一筋縄ではいかないというのが正直な感想。エレニとスピロスの子どもである映画監督の“A”(ウィレム・デフォー)が、中断していた映画の製作を再開するところから話は始まるのだが、間もなく映像はスピロスがソ連密入国しようとするシーンへと変わってしまう。

見終わってみれば、エレニ、スピロス、ヤコブの三人による国と時代を越えた三角関係の話であることが理解できるようになっているのだが、説明的なシーンがほぼ省略されてしまっているため、断片的なセリフや映像から前記のようなストーリーを読み解くのは結構大変。東西冷戦時代の現代史に馴染みの薄い今の若者には、尚更のことだろう。

俺自身、まだまだ良く分からない点が多かったため、鑑賞後、ネットで情報を漁ってみたところ、何と本作には「エレニの旅(2004年)」という前作が存在していたことが判明。難解だったのはそのせいかと納得しかけたのだが、どうやらそう簡単ではないらしく、そちらを見ている人にも難解だったらしい。

ということで、本作は三部作の2作目に当たるらしいのだが、アンゲロプロスの突然の死によって未完のまま終わってしまったとのこと。おそらく、本作の現代パートに出ていた、祖母と同じ名前を持つ“A”の娘が主人公になる予定だったのだろうが、それを見ればあの“第三の翼”の意味がより明確に理解できたのでしょうか。