1941年作品
監督 ジュリアン・デュヴィヴィエ 出演 マール・オベロン、ジョセフ・コットン
(あらすじ)
高名な福祉事業家であるリディア・マクミラン(マール・オベロン)の事務所に白髪の医師マイケル(ジョセフ・コットン)が訪ねてくる。彼はリディアの昔の恋人の一人であり、後日、招待に応じたリディアが彼の自宅を訪ねてみると、そこには彼の他にボブ、フランクという二人の元恋人が彼女を待ち受けており、皆で40年前のリディアとの恋の思い出を懐かしむことに....
ジュリアン・デュヴィヴィエが、戦争中アメリカに渡って撮った第一作目。
ストーリーからすると、本作の4年前に公開された名作「舞踏会の手帖(1937年)」の焼直しみたいな作品なのだが、情感溢れるばかりだった「舞踏会の手帖」に比較すると少々コメディ色が強く、かなりドライで輪郭がハッキリしているといった印象。
ラスト近くになって、ようやくリディアが本当に愛した4人目の恋人である船乗りのリチャードが登場するものの、彼の方ではとっくの昔に彼女のことなど忘れていたという、ちょっぴり皮肉で分かり易いオチも含め、いかにもハリウッド映画らしい作品に仕上げられており、このあたりのソツのなさはデュヴィヴィエの面目躍如といったところだろう。
まあ、決してつまらない作品ではないのだが、本作の最大の弱点は、主役のマール・オベロンが完全なミスキャストであるという点であり、正直、彼女が演じるリディアからは、3人の男を夢中にさせるほどの溌剌とした魅力や、恋愛に対する一途なひたむきさといったものを感じ取ることが出来ない。フランスでは実績のあるデュヴィヴィエも、ハリウッド第一作目ということで、起用する俳優についてあまり好き嫌いは言えなかったのかも知れないなあ。
また、全体の狂言回し的な役割を務めるマイケル役のジョセフ・コットンも、映画デビューしてまだ間もない頃の作品なのだが、こちらはさすがに上手いものであり、後の持ち役となる“とても良い人”をしっかり演じてみせてくれている。恋敵のリチャードを演じている役者さんがクラーク・ゲーブル似であるところも、ちょっと面白かった。
ということで、デュヴィヴィエがハリウッドで撮った作品には、本作の他、「運命の饗宴(1942年)」、「肉體と幻想(1943年)」、「逃亡者(1944年)」の三本があるのだが、次は彼お得意のオムニバス作品である「運命の饗宴」を見てみたいと思います。