暗殺者のメロディ

1972年作品
監督 ジョセフ・ロージー 出演 アラン・ドロンリチャード・バートン
(あらすじ)
1940年のメキシコ・シティ。カナダ人貿易商のフランク・ジャクソン(アラン・ドロン)は、いつものように恋人のギタとの逢瀬を楽しんでいた。しかし、その正体は、スターリンに追われてメキシコに亡命中の革命家トロツキーリチャード・バートン)の命を狙う暗殺者であり、ギタに近づいた理由も、トロツキーの熱烈な信奉者である彼女を利用して彼に近づくためであった….


実際に起きたトロツキー暗殺事件を題材にしたサスペンス作品。

作品の冒頭にも説明があるのだが、本作は実際の出来事をかなり忠実に映画化しているらしく、フランクが暗殺の道具として、拳銃やナイフではなく、何故か登山用のピッケルを使用するというのも史実どおりとのこと。Wikipediaの記述によると、彼は登山家でもあったらしい。

スターリンの指令によって暗殺計画が進められていることはトロツキー側でも十分に認識しているところであり、彼は、メキシコ・シティにあるほとんど要塞化された屋敷内に妻と一緒に立て篭もり、その周囲を銃を肩にかけた男たちが警備している。

まあ、それにしては、いくらギタの夫として紹介されたからとはいえ、フランクに対する警戒心が不足しているように思えてしまうのだが、実際には、初めてトロツキーに紹介されてから犯行に及ぶまで5ヶ月の準備期間をかけているらしく、この辺りの時間の経過が上手く描けていなかったためにそのような印象を与えてしまうのかもしれない。

ネット上の一部の批判にも見られるとおり、アラン・ドロンが演じている主人公は、名優リチャード・バートンの扮するトロツキーに比べ、あらゆる面において相当見劣りがするのだが、その責任の大半はフランクを単なるチンピラとして描こうとしたジョセフ・ロージーにあるものと思われ、そのことで俳優を非難するのは酷というもの。正直、こんなに覇気のないように見えるドロンというのは初めての経験だった。

ということで、本作を見る動機となったのは、「追想(1975年)」を見てファンになったギタ役のロミー・シュナイダーにある訳であるが、愛する男性に裏切られるという本作の彼女の役柄はあまりに惨めであり、あの素敵な笑顔もほとんど見ることは出来ませんでした。