アンナ・カレニナ

1948年作品
監督 ジュリアン・デュヴィヴィエ 出演 ヴィヴィアン・リー、ラルフ・リチャードソン
(あらすじ)
モスクワの兄の家を訪れたアンナ(ヴィヴィアン・リー)は、その地でヴロンスキー伯爵という若い士官と知り合いになる。お互いに心惹かれるものを感じつつ、その想いを断ち切るように彼女は夫カレーニン(ラルフ・リチャードソン)と息子の待つペテルブルグへと帰って行くが、彼女のことが忘れられないヴロンスキーは途中の駅で彼女の来るのを待っていた….


デュヴィヴィエ特集の第8弾は、英国に招かれて撮った文豪トルストイの名作の映画化。

例によって(?)、トルストイの原作は読んでおらず、“人妻の不倫の話”という程度の予備知識で本作を拝見させて頂いた訳であるが、主人公のアンナが、“悲劇のヒロイン”というイメージから想像するよりも、随分と積極的なキャラクターとして描かれているのが、ちょっと意外だった。

それが原作どおりなのか、それともヴィヴィアン・リーの個性によるものなのかは小説の方を読んでみないと判らないところではあるが、途中、何箇所か「風と共に去りぬ(1939年)」のスカーレットを髣髴させるようなシーンがあったのは、まあ、古典的名作の映画化としてはマイナスに評価されてしまうのかもしれない。

とはいっても、公開当時35歳の女盛りであるヴィヴィアン・リーはとても美しく、特に豪華なドレスを身に纏ったお姿は惚れ惚れするほどであり、それだけでも鑑賞価値は十分。まあ、この美貌へのやっかみもあってか、彼女の出演作には、本作を含め、悲劇的な結末の作品が多いんだけど、俺としては彼女の美しい笑顔で終わるような作品も見てみたかったところです。

ということで、本作は、第二次大戦中、戦火を逃れてハリウッドに渡っていたデュヴィヴィエが、終戦によりフランスへ戻る際、一時イギリスに立ち寄って撮った作品であり、慣れない環境のためか、彼の作品としてはやや鈍重な印象が残る。いっそのこと、舞台をパリに移して、フランス版「アンナ・カレニナ」にしてみたら面白かったかも知れません。