並木道

1960年作品
監督 ジュリアン・デュヴィヴィエ 出演 ジャン=ピエール・レオ、マガリ・ノエル
(あらすじ)
パリのモンマルトルにあるアパートの屋根裏部屋に一人で住んでいるジョルジュ少年(ジャン=ピエール・レオ)。妻を亡くした父親が別の女性と同棲を始めたことを嫌い、家を飛び出したまでは良かったが、未成年の彼がまともな職に就けるはずもなく、毎日食べる物にも困るような暮らしぶり。そんな彼は、同じにアパートに住むストリッパーのジェニー(マガリ・ノエル)に憧れを抱いていたが….


ジュリアン・デュヴィヴィエが64歳のときに公開された青春映画。

大方の予想どおり、今年30歳になるジェニーは子どものジョルジュなど相手にせず、ボクサー崩れのディッキーと彼女の部屋で同棲生活を始めてしまう。失意のジョルジュ君は、やはり同じアパートに住む同世代の少女マリエッタに乗り換えたものの、お金が無いため約束したデートに行くことも出来ない。

そんな具合にストーリーは進んでいくのだが、このジョルジュ少年、決して不良という訳ではなく、金に困ったからといって盗みを働いたり、他人に怪我をさせたりするようなこともない。最後は、ヤケになってアパートの屋上にあるネオンをメチャクチャに叩き割ってしまうのだが、そんな彼を、同棲していた女を家から追い出した父親が迎えに来て、笑顔のハッピーエンド。

主演のジャン=ピエール・レオは、本作の前年にトリュフォーの「大人は判ってくれない(1959年)」にも主演しているのだが、それとは異なる、本作のどこかほのぼのとした雰囲気はデュヴィヴィエ作品ならではのもの。公開当時は“時代遅れの監督が撮った似非ヌーヴェルヴァーグ作品”といった評価しか受けなかったらしいが、「陽気なドン・カミロ(1951年)」等に連なる作品だと思って見れば決して違和感はない。

特に、本作のジョルジュ君の場合、大人の階段を上るのではなく、元のサヤに納まることによってラストの救済がなされているあたりがなかなか興味深く、“無理をするとロクなことはない”というデュヴィヴィエの声が何処かから聞こえてくるような気がした。

ということで、ここのところとんとご無沙汰であったが、デュヴィヴィエ作品のDVDも何枚か本棚に溜まってきており、そのうち在庫整理をしなければと思っています。