ダークナイト

2008年作品
監督 クリストファー・ノーラン 出演 クリスチャン・ベイルヒース・レジャー
(あらすじ)
大金持ちのブルース(クリスチャン・ベイル)は、夜ごとバットマンへと変身し、ゴッサムシティに巣食うマフィア撲滅のために奮闘していたが、新たに赴任してきた地方検事のハービー・デントと出会い、彼こそがこの街を平和に導く真のヒーローだと確信する。そんなとき、顔を白塗りにした謎の男ジョーカー(ヒース・レジャー)が現れ、彼等に挑戦状を叩きつける….


クリストファー・ノーランによる新バットマンシリーズの第2作目。

前作「バットマン ビギンズ(2005年)」で新シリーズの状況説明はひと通り終わっているため、本作ではもう最初っからエンジン全開状態であり、極めて快調なテンポで物語は進行する。

ボーン・スプレマシー(2004年)」を見たとき、こういった畳み込むような演出は2時間が限界だろうと思った訳だが、本作はそれに勝るとも劣らないテンションを維持しつつ、上映時間は情け容赦ない152分。さすがに見終わった後は軽い疲労感を覚えたものの、まあ、この長丁場を飽きさせることなく最後まで引っ張り切った力量は、やはり称賛に値するだろう。

ストーリーのほうも、一見、善と悪、光と闇といった対立関係を装いながら、その実、そんな単純な図式には収まりきれない人間の業のようなものを上手く描いており、ヒース・レジャー演じるジョーカーの理解不能な行動が人々を恐怖へと陥れ、それが新たな暴力を生み出すという展開は、「犯罪の裏側に存在する“恐怖”を描く」という本シリーズのテーマにもピッタリ。

ただし、その最大のクライマックスとなる筈の例の2隻のフェリーボートに関するエピソードで、問題が(バットマンの活躍とは無関係に)人間の“理性”の力のみによって解決されてしまうというあたりは、(「9.11」や「大量破壊兵器の存在」といった恐怖に怯えて、戦争という暴力のスイッチを入れてしまったという過去を考えてみても)ちょっと甘すぎだったかも知れない。

ということで、まあ、あそこでどちらかの船を爆破してしまっては“全米で大ヒット”という訳にはいかなかっただろうし、アメコミの映画化としては本作は十分過ぎるほど良くやってくれたと思う。こうなると続編への期待が高まるところだけど、次回作の主役になるものとばかり思っていたトゥーフェイスはあっさり倒されてしまうし、レイチェルやルーシャスも戦列を離れてしまうということで、うーん、クリストファー・ノーランは本当に続編を撮る気があるのかなあ。