アルゴ

2012年作品
監督 ベン・アフレック 出演 ベン・アフレックブライアン・クランストン
(あらすじ)
1979年11月、革命の嵐が吹き荒れるイランでアメリカ大使館人質事件が発生し、その際、密かに大使館を抜け出した6人の職員は、カナダ大使の私邸に匿われていた。彼等を救出するため、CIAの専門家であるトニー・メンデス(ベン・アフレック)に白羽の矢が立てられるが、彼が提案したのは、この6人を架空のSF映画のスタッフに仕立て上げるという奇想天外な作戦だった….


ベン・アフレックの主演・監督による第85回アカデミー賞作品賞受賞作品。

あらすじだけ読むと、実際に起きたアメリカ大使館人質事件を題材にしたフィクション作品としか思えないのだが、実は、こちらも“史実”だというのだから吃驚仰天。外交上の配慮から、1997年にクリントン大統領が公開に踏み切るまで、十数年間にわたってマル秘扱いにされていたらしい。

まあ、実話とはいえ、DVDの特典映像に収録されている当事者のインタビューなんかを聞いていると、本作のラストで描かれている(少々取って付けたような印象のある)危機一髪のエピソードは実際には起こらなかったらしく、当然、それなりの脚色はされているのだろうが、個人的な好みからいえば、これでもまだまだサービス不足。

冒頭でイラン革命が起こるまでの経緯を簡潔に紹介し、“正義”がアメリカ側にだけあるのではないことを明らかにしているのは評価するが、いざ本題が動き出すと、CIAがまんまとイラン側の裏をかくという、アメリカ側にとってのみ痛快なストーリーになってしまっており、両国のバランスをとるためにも、この馬鹿馬鹿しい作戦の設定を活かしたドタバタ喜劇をもっと見せて欲しかった。

また、出演者の方もベテランのアラン・アーキンを起用している以外は相当地味な布陣であり、正直、本作がアカデミー賞の作品賞に選ばれたというのは少々意外。本作の製作サイドに反イランのプロパガンダ映画を作ろうという意思があったとは思わないが、本作を支持した大勢の人々の気持ちを考えると、ちょっぴり不安になってしまう。

ということで、既に、アメリカ大使館人質事件をイラン側の視点から描いた「The General Staff」という作品の製作が発表されているそうであり、そちらの作品にも興味津々。「別離(2011年)」を見てもイラン映画界のレベルは相当高そうであり、是非、その作品で二度目のアカデミー賞外国語映画賞を目指して頂きたいと思います。