幸福の設計

1946年作品
監督 ジャック・ベッケル 出演 ロジェ・ビゴ、クレール・マフェイ
(あらすじ)
印刷工のアントワーヌ(ロジェ・ビゴ)は、若くて美人の妻アントワネット(クレール・マフェイ)と二人、パリの下町にあるアパートの屋根裏部屋で貧しくも幸せな暮らしを送っていた。そんなある日、アントワネットが買った宝くじが80万フランの大当たりとなり、二人して大喜び。翌朝、アントワーヌは賞金の受取りに出掛けるが、その途中で宝くじを入れた財布を落としてしまう….


ジャック・ベッケル監督による“パリ下町三部作”の第一作目。

先日拝見させて頂いた「穴(1960年)」がとても面白く、その影響で当該作品の14年前に公開された本作を見てみた訳であるが、正直、これが同じ監督が撮った作品かと思うくらい「穴」とは異なったテイストを持つ作品であり、俺のジャック・ベッケルに対するイメージもちょっと変更する必要がありそう。

ストーリーだけ読むと、プレストン・スタージェスあたりが撮ったハリウッド・コメディのリメイクみたいな作品なのだが、随所に挿入されるパリの下町に住む庶民たちの生活の様子がなかなか面白く、本作を楽しむ上での大きな魅力の一つになっている。

中でも最高に可笑しいのが、美人のアントワネットにしつこく言い寄る食料品店主のローランであり、「花咲ける騎士道(1952年)」でも愉快な悪党ぶりを披露してくれたノエル・ロクヴェールという俳優さんが演じているのだが、その口説き方は露骨であり、下心が見え見え。おそらく、過去に同様の手口で仕留めたらしい女性が、今も彼の店で働いているというギャグもなかなか面白い。

なお、80万フランの宝くじがハズレくじとすり替わるトリックの仕込みは一瞬であり、よく見ていないと見過ごしてしまうかもしれない。冒頭、読書好きのアントワネットが宝くじ売り場で働く女友達から本を借りるというシーンが出てくるのだが、その直前、彼女が別の客から受け取ったハズレくじを何気なくその本にはさみ込む場面がチラッと写っており、要するに、アントワーヌが当たりくじを隠した本には、既に別のハズレくじが隠されていたという訳である。

ということで、“パリ下町三部作”にはあと2本、「エドワールとキャロリーヌ(1951年)」と「エストラパード街(1952年)」という作品があるのだが、ともにDVD化されていないらしく、拝見するのはなかなか大変そう。ここは、ジュネス企画様に最後まで責任を取ってもらうしかないようです。