女と男のいる舗道

1962年作品
監督 ジャン=リュック・ゴダール 出演 アンナ・カリーナ、サディ・レボ
(あらすじ)
女優になることを夢見るナナ(アンナ・カリーナ)は、夫や子供を棄てて一人でパリに出てきたが、レコード店員の安給料では自分の部屋代さえ満足に支払うことが出来ず、やむなく道で出会った見知らぬ男を相手に売春を始める。最初は代金の相場さえ知らない彼女だったが、いつしかラウール(サディ・レボ)というヒモがつき、一人前の娼婦へと墜ちていく….


ジャン=リュック・ゴダール長編映画第4作目。

正直、ゴダールの難解さは俺の苦手とするところであり、本作も、まあ、お勉強のつもりで見てみたのだが、意外や意外、ストーリーはとてもシンプルで分かり易く、十分に面白いと思える作品だった。

原題の“Vivre sa vie”は、“自分の人生を生きる”という意味だそうであり、女優になるという自分の夢を叶えるために一人でパリに出てきた主人公のナナにピッタリの題名。しかし、“自分の人生を生きる”ことはそう簡単では無さそうであり、金に困って売春という安易な道を選んでしまった彼女は、いつしか“自分の人生を生きる”ことを止めてしまい、無残な最期を遂げることになる。

まあ、ストーリー的にはこんなシンプルな内容なのだが、そこはゴダールということで、カール・ドライヤーの傑作サイレント映画である「裁かるゝジャンヌ(1928年)」の映像やエドガー・アラン・ポーの短篇小説「楕円形の肖像」の朗読、さらには老哲学者との会話といった魅力的な素材を投入することにより、ストーリーに奥行きや陰影を与えることに成功している。

もちろん、見る人が見れば、これらの素材とストーリーとの間に何らかの有機的な関係性を見いだすことが出来るのだろうが、それが出来ない俺にとってもこれらの素材は十分に“お洒落”であり、この単なる高尚さに止まらない格好の良さこそが、ゴダール作品の魅力の一つなのだろう。

ということで、本作におけるもう一つの、そして最大の魅力は、主人公のナナを演じるアンナ・カリーナの素晴らしさ。彼女とゴダールは本作の公開された前年に結婚したばかりであり、当時、彼女の魅力を誰よりもよく知っていたゴダールの演出が功を奏したのだと思います。