ヨーロッパ一九五一年

1952年作品
監督 ロベルト・ロッセリーニ 出演 イングリッド・バーグマン、アレクサンダー・ノックス
(あらすじ)
ローマに住むアイリーン(イングリッド・バーグマン)は、米国商社の総代理人である夫ジョージ(アレクサンダー・ノックス)の仕事柄、人付き合いが多く、12歳になる息子ミシェルともなかなか一緒に居られない。そんなとき、ミシェルが階段から落下するという事故が起き、幸い一命は取り留めたものの、アイリーンは彼女の従兄弟のアンドレから、ミシェルは故意に身を投げた疑いがあると耳打ちされる....


ロッセリーニ&バーグマンのコンビ第二作目。

結局、退院後にミシェルの容態は急変し、帰らぬ人となってしまう。打ちひしがれたアイリーンは、社会主義者であるアンドレの助言により、社会の底辺で貧困に苦しむ大衆の力になることで、その悲しみを乗り越えようとするのだが、そんな彼女の考えは実の母親にも理解してもらえず、夫ジョージからはアンドレとの不倫を疑われる始末。

ここまで見たところで、当然、アイリーンとジョージ、アンドレの三角関係を扱ったメロドラマの予感が強くなるのだが、この時期のバーグマンがそんなハリウッド的な甘っちょろい展開に納得する筈もなく、何とアイリーンは労働に絶対的な価値を見出そうとするアンドレ社会主義思想を拒否するばかりか、既存の秩序を維持しようとする既成宗教まで否定してしまう。

正直、普通の主婦に過ぎなかったアイリーンが、短期間のうちに、貧困に喘ぐ大衆のみならず、売春婦や犯罪者、精神障害者といった人々まで分け隔てなく受け入れる“聖人”に変貌していくというストーリーには、少々性急かつ強引な印象も受けるのだが、ロッセリーニによるドキュメンタリー・タッチの演出からは、それを上回る力強さを感じることが出来る。

特に、アイリーンが友人(ジュリエッタ・マシーナ)の代わりに労働者として工場を訪れるシーンの描写は圧巻であり、彼女の言うとおり、その非人間的な環境の下で行われる労働が刑罰以外の何ものでもないことを見事に表現している。

ということで、アイリーンが精神病院に入れられてからのストーリーに変化が乏しい点が少々残念であるが、そこまでだけでも見応えは十分。機会があれば、失敗作といわれるコンビ第一作目の「ストロンボリ/神の土地(1949年)」も見てみようと思います。