ジンジャーとフレッド

1985年作品
監督 フェデリコ・フェリーニ 出演 マルチェロ・マストロヤンニジュリエッタ・マシーナ
(あらすじ)
かつて、ジンジャー・ロジャースフレッド・アステアのソックリさんとしてイタリア国内で人気を博したアメリア(ジュリエッタ・マシーナ)とピッポマルチェロ・マストロヤンニ)の二人が、クリスマスのTV番組に生出演するため、30年ぶりの再会を果たす。久しぶりの晴れの舞台に少々興奮気味の二人であったが、過ぎ去った日々を思い出しているうちに様々な感情が蘇ってくる….


フェデリコ・フェリーニ65歳のときに公開された作品。

その“クリスマスのTV番組”というのは、様々な分野の有名人が登場するバラエティ番組であり、ちょっと奇人変人的な要素も含まれている。アメリアとピッポは、そんな有名人の一人である年老いた提督が登場する際の前フリ(=海つながり)として、昔の持ちネタであった港での恋人たちの別れをテーマにしたダンスをスタジオで披露することになる。

まあ、TV局側が目論んでいたのは、とうにピークを過ぎた老ダンサーが、それこそ老骨に鞭打ってタップを踏む姿を見せることで視聴者の涙を誘う、といういかにもTV番組らしい安っぽい企画であり、これを無名の俳優が演じていたら、老醜を晒すだけの相当惨めなシーンになっていたことはまず間違いない。

しかし、本作で実際に踊っているのは、マルチェロ・マストロヤンニジュリエッタ・マシーナという超豪華コンビであり、超一流のダンサーであるアステアの真似をするピッポという二流芸人を、これまた超一流の俳優であるマストロヤンニが下手そうに(?)演じるという、幾重にも重なった虚構と現実の狭間で、我々は自分の目に映るものをどう受け止めてよいやら分からなくなってしまう。

このシーン以外にも、猥雑な雰囲気の中でユニークなキャラクターが大挙登場するなど、久しぶりにフェリーニを見た、っていう気持ちにさせてくれる作品なのだが、フィルムの保存状態が良くないせいか、そう古い作品ではないのにもかかわらず、色彩があまりパッとしないのがとても残念。せっかくのお祭り気分もいま一つ盛り上がらなかった。

ということで、先日見た「女の都(1980年)」があまり面白くなかったため、ちょっと不安な気持ちで鑑賞に臨んだのだが、そんな心配が不要だったことが分かり、まずは一安心。さて、次はどの作品を拝見させてもらいましょうか。