2011年作品
監督 アレクサンダー・ペイン 出演 ジョージ・クルーニー、シェイリーン・ウッドリー
(あらすじ)
オアフ島在住の弁護士マット・キング(ジョージ・クルーニー)は、カメハメハ大王の末裔であり、カウアイ島に広大な原野を所有していた。その土地の売却問題をはじめ、仕事に忙殺される彼には家庭を顧みる余裕もなかったが、そんなとき妻のエリザベスが事故で昏睡状態に陥ってしまい大ショック。さらに長女アレックス(シェイリーン・ウッドリー)からは信じられないような事実が明かされる….
ジョージ・クルーニー主演によるハワイを舞台にしたホームドラマ。
妻を襲った突然の大事故に、家庭を疎かにしてきた自分の過去を悔いるマットであったが、そんな彼に長女が告げたのは“ママは浮気していた”という衝撃の事実。昏睡状態に陥ったままの妻を問いただす訳にもいかず、怒りのやり場に困った彼は、娘二人と長女のボーイフレンドを連れて、カウアイ島に滞在中の浮気相手に会いに行く。
家族の死や妻の不貞という重い題材を扱った作品であるが、味付けはコメディ仕立であり、ハワイ特有の柔らかい雰囲気にも助けられて、なかなか気持ちの良い作品になっている。残念ながら本作では“奇跡”は一度も起きないため、妻は昏睡状態のままこの世を去ってしまうし、彼女の浮気も事実だったということが判明するだけ。しかし、そんなダメな人間を優しく包み込んでくれるのが“家族”という存在であるという結論は決して悪くない。
勿論、ダメ人間というのは妻のエリザベスに限ったことではなく、本作に登場する人物のそれぞれが多かれ少なかれダメなところを抱えているのだが、“現在”というのはそういったダメな人々の長年のつながりによって築かれてきた訳であり、その象徴がカウアイ島にある広大な原野。これを開発することなく後世に伝えようとしたマットの決断は、まあ、動機は多少不純だったにせよ、正しい選択だったと言えるだろう。
本作で、妻に浮気されてしまう男という“新境地?”を切り開いた主演のジョージ・クルーニーはなかなかの熱演であり、主役のマット・キングのイメージがそう惨めにならずに済んでいるのは彼の男っぷりの良さに負うところが少なくない。
ということで、原題は「The Descendants(=子孫)」であるが、それに「ファミリー・ツリー」という邦題を付けたのは、「ツリー・オブ・ライフ(2011年)」のパクリと言われても仕方ないところ。B級作品だったらまだしも、本作のような立派な作品にはもうちょっとオリジナリティのある邦題を付けて欲しかったと思います。